三.侍 時々 姫
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薄れゆく記憶の中、微かだが間違いなく彼の声を耳にした。
もう声を出す気力すら失いかけていた刹那だったが、その人物の名を何とか口に出した。
「銀…時…?」
気づけば一瞬の間に周りにいた男たちが吹き飛び、鉄が砕ける音を耳にしたかと思えば、自分の体を支配していた鉄の鎖から解放された。長い時間引っ張られていた反動で重力により力が抜け落ちた。
薬のせいで指一つまともに動かせない刹那の体は、ふわりと崩れそうになる。
だがそうなる前に、銀時が肩を引き寄せ、刹那は真っ白な着物を纏った大きな胸の中へと吸い込まれた。
「しっかりしろ、大丈夫か刹那」
「ぎ…銀、私は大丈夫…。それよりも早く、総悟を…!」
こんなボロボロの状態になってまでも、他人の心配をする刹那の姿に驚きながらも、銀時は先方にいる沖田の姿に目を向けた。
彼もかなり衰弱しており、呼吸も荒々しい。
周囲に転がっている注射器を見ては、奴も刹那と同じ目にあったのだと察した。
「やれやれ、随分派手に暴れる輩がおったもんじゃい。うちの部下たちがこんなにも簡単にやられちまうとは…。」
沖田に駆け寄ろうとしたが、その先にいた老人がそう呟いたことにより、踏みとどまった。
「…頭イカれてんなぁジジィ。人をオモチャにして楽しいかよ。人をこんな姿にして楽しいかよ。」
「カッカッカッ!楽しくなきゃ、こんな事はできんだろうが。お主も分かり切ったような質問をするのぅ」
周囲にいた部下たちはやられたというのに、老人はやけに緊張感がない。それどころか、まだ自分に勝利の道があるとすら思っているように見える。
銀時との会話をいている間に、神楽が素早く沖田の鎖を外した。
「おい生きてるか?クソガキ」
「…はっ…!しょーもない心配してんじゃねーよ。」
「なっ!助けてもらったのに何て口聞くネ!もっぺん縛るぞコルァ!」
「か、神楽ちゃん!その辺にしてあげて!…沖田さん、大丈夫ですか?!」
「…大丈夫でぇ。っていうか、これだけで根をあげれるわけねぇだろ。俺より刹那の方が何十倍も辛い思いしてたっていうのに……」
「…お前…」
青ざめた顔をして呼吸もままならない彼は、口角を上げてそう言った。そして奪われた刀を新八から受け取り、それを支えにゆっくりと立ち上がった。
強がってはいるものの、もはや気合と根性だけで立ち上がる。
沖田の目を見て、銀時は思った。
こいつは本当に心から、刹那を大切に思っている、と。
そんな彼の心が自分と共感していたことに、不謹慎にも笑みがこぼれる。
「うっ……!!」
「刹那?!」
刹那が銀時の胸の中で胸を抑えて苦しみ始める。
「カッカッカッ!苦しいか、レイ。そうだろうなぁ、実験も途中で終わってしまっては、お主もさぞかそ苦しいだろうのぅ。せっかくもう少しで、その見えなくなった目も回復し、お主の寿命ももう少し伸びたというのに……」
「な、なにッ?!」
各々が老人の言葉に反応する。
それを見兼ねた老人は、ニヤリと含みのある笑みを浮かべてこう言った。
「どうじゃ?もう一度レイをこちらに寄越せば、今の病も目も治してやろうて。その代わりワシの命だけは見逃す。お主らにとっても悪い話じゃないだろ?」
「ふっ、ふざけろよジジィッ!!誰がてめぇなんぞの所に刹那を渡すかよッ!!こいつはレイじゃねぇ、刹那だっ!!」
銀時が怒鳴り散らす。けれども、胸の中で苦しむ刹那の姿を見ていると、決心は鈍り始める。
「くそっ……!」
銀時は刹那の細い肩を強くにぎりしめる。
神楽や新八、総悟も今すぐ目の前の敵を切り刻みたいのに上手く動けない。
だが、そんな彼らの耳に一人の消えそうな声が聞こえてきた。
「ふ、ざけんなよジジィ。私がそんなんでてめぇの医学にすがると思ったか……?笑わせんな、視力を戻し、生き長らえたとしても、大切な…この人達との思い出と天秤にかけるなんて、馬鹿げた話だ。私は、あんたの手を借りるのだけは御免こうむる。そんなことして視力取り戻すくらいなら、見えなくていいさ。見えなくても、みんながそばに居てくれるんなら、それでいい。さっさとくたばれクソジジィ」
苦しさ故に額に汗がながれ落ちるほどだ。
彼女の様子を見ていれば、誰だって辛いのはわかる。
それでも、彼女が出した答えだ。
沖田は刀を鞘から抜き、切っ先を老人へと向けた。
「聞こえたかクソじじぃ。うちの姫様はテメェのこと要らねぇってよ。さっさと……死んじまいなッッ!!」
「やれやれ、交渉決裂じゃな。残念だったのう。」
「…」
殺意むき出しの五人を前にして、自分のペースを崩すことなく話す老人に、銀時は違和感を抱いた。
このジジイ、一体何を企んでーーー。
そう考えていた矢先、老人はポケットからリモコンを取り出し、迷うことなく一つのスイッチを押した。
その瞬間、部屋のあちこちから隠し扉が開いたは、エイリアンのような化け物じみた生き物が次々と現れ、銀時たちの周囲を囲んだのだった。