1.序奏
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※下の名前は男女共用できる名前を付けるとストーリーがしっくりきます💦
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「なーに辛気臭ぇ面で写真見てるんですかい、旦那ァ」
「うぉっ!!おまっ…急に背後から現れないでくれる?!心臓に悪いんですけど!!」
銀時はすっと後ろから突如現れた真選組の沖田総悟に酷く驚き、飛び跳ねては壁に背中を預けた。
彼はその隙に手に持っていた写真を素早く取り、じっと眺めた。
「この女…」
「…?!おい、その写真の奴見え覚えあんのか?!」
沖田が釘付けになっている様子を見た銀時は、今度は総悟に近づき顔を覗き込んでそう問う。彼はニッと笑みを浮かべてその写真をテーブルの上に置き、口を開いたところで遠方から沖田の名を呼びながらこっちに向かって大きな足音が近づいてくるのを耳にした。
「チッ、もう見つかったか…」
舌打ちをしてそう呟いた時には、既に胸倉をつかまれており、なぜか服装等が微妙に乱れている土方がそこに現れたのだ。
「総悟てめぇぇぇ!任務中に上司の目をくらましてさぼってお団子たぁいい度胸してんじゃねーかコラァ!」
「違いますよ。俺はお団子じゃなくて旦那たちを見かけたんで、追いかけてきたんですやい。なんか面白い匂いがしたんでね」
「あ?なんだ、てめぇらいたのか」
万年目を血走らせ、出会う大半は加えたばこの姿の真選組の一員である、土方の姿がそこにはあった。血が上って沖田しか見ていなかったが、ようやくテーブルに万事屋のメンバーが腰を下ろしている事に気が付き、沖田の襟からパッと手を離した。
「なんなんだおめーらは毎回毎回騒がしいな。仲間割れならよそでやってくれよ」
「おめーらに言われたくねぇよ。ん…おい、何だこの写真」
テーブルに置かれたレイの写真を見て、土方は眉をしかめた。
「今旦那たちが探している人物だそうですぜぃ。ちょっと面白くねぇですか?」
「…おいおいどういう事?ちょっと俺たちにも分かるように説明してくんない?」
「おめぇら、この女の写真をどこに手に入れた?」
土方の目つきがいつも以上に鋭くなる。銀時達はその目を見ては、真選組は何か情報を掴んでいるとみて、銀時は口を開いた。
「その子を探して欲しいって依頼を受けてるんだ。心当たりがあるなら、教えてくれ。彼女をどこかで見かけたのか??」
「…わりぃが、それを答えることは俺たちにはできねぇ」
「その言い方明らかにその女性の事知ってますよね?!教えて下さいよ、土方さん!もしかしたらその人に危険が迫ってるかもしれないんですよ?!」
ガタンと音を立てて新八が立ち上がり、土方に口論する。だが彼は目を逸らし、静かに閉じて冷静な口調でこう返した。
「あんたらが首を突っ込むような問題じゃねぇ。」
「ちょっとさっきから何アルか!」
今度は神楽が土方に突っかかろうとしたその時。いつもは二人に比べて大人の冷静さを持っているはずの銀時は、必死な表情で土方の胸倉を掴んだ。
「こいつをどこかで見たんなら教えてくれ!小さい手がかりでも何でもいいんだ!頼む!」
その銀時の様子に、その場にいる誰もが驚いた。普段人との関わりを面倒そうにし、一見興味がないような素振りすら見せるこの男が。珍しくたかが一人の女を探すために必死な表情を浮かべていたからだ。
「なんだオメェ、やけに必死じゃねぇか。この女に惚れてんのか?」
「惚れてるとか惚れてねぇとかはどーでもいいんだよ!知ってるならさっさと教えろこの野郎!」
「ちょっと落ち着きなせぇ、旦那。一体彼女とどんな繋がりがあるって言うんですかぃ」
「…」
沖田の言葉を耳にし、銀時は土方をいったん解放して目を逸らし小さな声で話を始めた。
「…似てるんだよ。俺の知ってる奴に。」
「…なに?」
「でもそいつは俺の目の前で死んだはずだ。だからそいつじゃねぇのは分かってる。だが、そいつの身内の人間だったとしたら、俺はこの子が危険な目に合ってるなら助けてぇんだ。…俺はあいつの最期を見た唯一の人間だからな。」
銀時らしくない。その場にいた誰もがそう思った。だが、その必死さは決して演技でもなく、冗談でもない。普段何だかんだでつるんでいる奴から見れば、いつもよりも感情的になっている彼の様子を見れば、一目瞭然だ。
「ったく…しょうがねぇな」
乱れた服を整え、土方はポケットに入れていたタバコを取り出し、火をつけた。
「その女なら、今うちで保護してらぁ。昨夜傷だらけで、路地にぶっ倒れてたんですぜぃ。ま、未だに意識は戻ってねぇですがね。」
「…なんで真選組で保護してるんですか?傷を負っているなら、普通病院じゃ…」
新八の独り言のような疑問の声に、今度は沖田が答えた。
「連れてこうとしたら、全力で嫌がられたんスよ。どうも、薬剤の臭いとかああいうのが苦手みたいですぜぇ。まぁ、意識を取り戻したのはその一瞬で、未だに眠り続けたままなんスけどね。」
「…会わせてくれねぇか?」
「おいおい、てめぇ真選組の屯所にまでくる気かよ!あそこは安全だし何かありゃ俺たちが護れるからいーだろーがっ!」
「…頼む。」
「銀ちゃん…」
「銀さん…」
新八や神楽は、何となくではあるが銀時が今回の依頼を妙にあっさ
り引き受けた事に疑問を抱いていた。一人の人間を探すために迷うことなく大金を差し出す天人。そのエドという男を護衛していた殺気を常に纏っていた二人。どこからどう考えても、天人がこの写真のレイという女性を監禁していたようにしか思えない。
勘の鋭い銀時ならとっくに気づいているだろうと、新八は思っていた。
だからこそ、引き受けた事に最初は納得がいかなかった。それが今、こんなに必死な銀時の姿を見ることは滅多にないことから、よほど大切な人に似ているのだろう、と察した。
「だが姿形が似てるだけで、そいつの血筋のもんとは限らねぇんだろ」
「…まぁ、な」
「なんでテメェが珍しく必死になるんだよ。なんか訳ありなのか?」
「…ちょっと確かめてぇ事もあるんだ。」
死んだ魚の目の赤い瞳が光を灯し、まっすぐに土方に向く。何かを覚悟し、強い意志がある事が悟れた土方は、大きく肩で息をしてくるりと踵を向けた。
「…ついてこい」
まるで独り言のようなその小さな一言は、銀時にとっては希望の一言へと変わり、急いで席を立ち、彼らの後をついていくのであった。