三.侍 時々 姫
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「薬品を集めている攘夷志士の集団について、だと?」
新八と神楽を引連れて銀時が訪れたのは、桂の所だった。
ちょうどアルバイトで公園の清掃員を営んでいるところを偶然見かけたと言った方が正しいが、彼も攘夷志士の一人。もしかしたらなにか手がかりを掴んでいるのではいかと考えたっての行動だった。
「ヅラなら知ってんじゃねぇかとと思ってよ。」
「ヅラじゃない、桂だ。まぁ、噂に程度なら聞いたことがあるが…」
「本当ですかっ?!なんでもいいです、教えてくださいッ!」
新八が真剣な表情で桂の目をじっと見る。
どうやら訳ありで連中のことを探しているというのはすぐに判断できるが、普段攘夷志士に興味のない銀時がなぜこんなことをしているのか、少しばかり興味を抱いた。
「なぜお前たちがそんな必死になって連中を探しているのだ。」
「まぁ、ちょっと訳ありでな。」
「訳あり?大した訳じゃないのなら奴には関わらん方がいいぞ。あれらは危険するぎるからな。」
何かを思い詰めた桂の瞳を見て、銀時は眉をしかめる。
「どういう意味だ?そりゃ。」
「…幕府を憎むあまり、その憎しみと怨念を極限まで持ち合わせた奴らよ。今はあちこちの病院から多くの薬品を盗んでは、何かよからぬ事を考えているみたいだが…その奴らの頭が、人間の姿を装った天人だと聞いている。」
「天人……?!」
「こんな話を聞いたことがある。どこぞの天人達が、天人達の縄張り争いでよからぬ事を考えた。それは、人間の…江戸で最も最強だとかつて言われていた、侍の殺人兵器計画を企てていたということを。」
「なっ……!!」
「そ、それってまさか…!」
「…奴らは江戸に来ては侍を何人か連れ去り、この世のありとあらゆる生物の中で、最強の存在を作り出すという実験を行った。幾度も死に匹敵する痛みや、化学反応実験により身を滅ぼされた侍もいると聞いた。殺人兵器を生み出すには、数え切れないほど数多くの犠牲者が出たそうだ。」
「……」
「だがその実験にも、試練にも唯一耐えられた人物が一人だけいた。それは天人達にとって、この世界が気に入らなくなった時に、革命を起こさせる一つの希望となった。そして、その殺人兵器の噂は天人達の中で瞬く間に広がっていった。誰しもがその生みの親である天人を恐れた。……が、最近それが何者かの手によって消されたという噂が出始めた。」
淡々と話す桂の話に、銀時はごくりと息を飲んだ。
「調べるうちに、その殺人兵器は人間の姿を保ち、主の手から逃れられて今は普通の生活を送っているという。そこで天人達は考えた。ならば、それを自分のものにし、政権を握ろう、と。」
「なっ、なんてことを……!」
「薬品を集めている奴らもそう考えている連中のうちの一派だ。殺人兵器をいかに自分たちに服従させるか、いかに忠実なる下僕にするかを考え、いろいろ実験を行っている。そして更には、この江戸になにかよからぬ事をする計画を立てているらしい。そして、その殺人兵器を見つけ出し、もう一度実験を行なって自らのものにしようという魂胆だ。」
銀時は歯を食いしばった。
あれだけ刹那が苦しんだ悪夢からようやく解放されたというのに、彼女をまた地獄へ連れていこうとしている奴が存在するのか、と。
「ま、待つねズラッ!ってことは、アイツらは刹那姉ちゃんを探していると言うことアルかッ?!」
「刹那姉ちゃん……?もしかして君らは、その殺人兵器と知り合いなのか?」
焦りを露にした神楽にそう尋ねたが、その質問に答えたのは、酷く怒りを抑えた声だった。
「あぁ、なんならズラも知ってる奴だよ。テメェもよーく知ってる……かつて〝麒麟〟と呼ばれた刹那だ。」
「なっ……!!」
銀時の口からその名が出ると、桂は酷く動揺し、そのまま胸倉をつかんだ。
「貴様っ!俺の前であれほどあいつの名を出すなと言ったであろうッッ!あいつが今この世にいるはずはない!あいつは俺たちの前で……死んだのだぞッッ……」
「……ああ、そうだ。あいつは確かに天人たちの手によって殺された。だがテメェが今俺たちに説明した話、もっぺんしてみろよ。それがあいつが今存在している理由にならァ。」
銀時のその言葉は、桂が全ての理を理解するのには十分すぎた。
それどころか、受け入れ難いその残酷な真実に身震いさえしていた。
桂の様子を見て、銀時は掴まれていた着物を直し、頭をかいた。
「あいつァ、そんな地獄の中で生きてた。…俺たちにもう一度会いたかったって言ってたぜ。たったそれだけの理由のために、あいつは死ぬよりも辛い地獄を生き抜いてきたんだ。」
「そ、そんなっ…じゃ、じゃあ唯一その実験に成功した殺人兵器というのは……」
「他でもねぇ。刹那だ。」
「早く刹那さんを探さないと不味いですよ、銀さん!」
「もしかしたらそいつらに攫われちゃうかもしれないネ!!」
「まぁ待てよ。あいつが今どこにいるかテメェらも知ってんだろ?江戸の民間人を守る真選組の屯所だぜ。そう簡単に攫われることたぁねーだろーよ。それより先に、奴らのアジトを見つけてぶっ潰してこねぇとな。アイツに変な虫がつかねぇうちに、さっさとこのヤマ片付けんぞテメェら。」
銀時の言葉に、新八と神楽は大いに頷き、桂の元を去ろうとした。
だが、桂は銀時の腕を掴んだ。
「…俺も一緒に行く。」
突然の事実を突きつけられ、頭の中は未だ錯乱中だった。けらども桂は、この目でさえ見れば受け止められるだろう、と判断したのだ。
銀時はフッと息を吐くように笑っては、口角を上げてこう返した。
「今のアイツ見たらビックリすんぞ、お前。」
そんな彼につられて、桂も思わず小さな笑みを浮かべた。