三.侍 時々 姫
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先程まで交戦していた敵と、仲良く同じ所にタンコブを作り、同じ姿勢で説教を受けていた。
「ったく、総悟テメェ、刹那のこと大事にしてると思いきや、何やってんだコノヤロー!」
「刹那さんも刹那さんですよぉ、目も見えないのに何やってんですかぁ、あんたァ。」
沖田には土方、刹那には近藤が前につき、各々から説教を受ける。
二人とも自分の身を案じてそう接してくれたはいいが、刹那はどこかそれを複雑に感じた。
真選組の人達はいい人ばかりだ。
こうやって、心から自分を大切に思ってくれているのが伝わってくる。
だが刹那は、それに複雑な感情を抱いていた。
こんな姫のような扱いを今まで生きてきた中で受けたことはない。
なんなら最近は万事屋メンバーがそう接してはくれたが、ここまでの箱入り娘のような扱い
をして来ることは無かった。
目が見えないという事を、そこまで特別扱いされると心が痛む。
刹那は近藤のやんわりとした説教を受けながら、静かに胸を痛めていた。
そんな刹那の心中を察した沖田は、彼女の横顔に目を向けていた。
確かに大事な人だし、出来ることなら個人的にはずっと、誰の目にもつく事の無い部屋に閉じ込めておきたいくらいだった。
その艶のある長い髪、くっきりとした輪郭に透き通るような綺麗な肌。曇りのないよく通る綺麗な声。細いラインの華奢な体。
目が見えなかろうがなんだろうが、刹那の美しさはおもむろに出ている。
こんな男ばかりのむさい場所で、彼女が人目についたらば変な虫がつくのは明白だ。
そんな事まで考えている沖田も、実際はそうはいかず、彼女が壊れ物のように酷く大切に扱われることを嫌がるだろうと考えては、今に至るわけで。
せっかくさっきまで楽しそうに笑っていた彼女も、気づけばまた落ち込んだ表情を浮かべていた。
「あーっ。…めんどくせぇ」
自分がこれだけ一人の女性に執着するのは、本当に理解できない。
それでも刹那だけは、他の誰よりも違った生き物に見えて仕方がなかった。
その自分の感情を未だ理解できない自分が一番面倒だ。
「おいコラ総悟、何がめんどくせぇって?!あぁッ?!人の話聞いてんのかテメェッ!」
「聞いてまさァ。んじゃ、そろそろ巡回交代ですよね?俺支度して行きてぇんですが。」
「テメッ、全然話聞いてねぇな?!」
「あぁ、あと俺の嫁も連れてっていーですかぃ?」
「嫁じゃねぇだろッ!テメェまだそのしょーこりもねぇ冗談貫きの推してるのかよッ!だいたい生活もまともに一人で出来ねぇ刹那を巡回に連れてくったぁどういうことだッ!仕事にもなんねーし刹那が危ねぇだろーがッ!」
「あのなぁ総悟、いくら刹那さんが強いひとだからって、やっぱ目が見えな」
「近藤さん。土方さん。」
二人の言葉を遮るように、沖田が刹那の手を取り立ち上がった。
その声はいつもよりも低く、何か威圧感を感じるような、それ以上喋るなとでも言いたげな声だった。
「目が見えねぇ、生活が出来ねぇ。あんたら刹那をそんな風しか見てねぇんですかぃ。確かに不便でさァ。しかもそれを一番気にしてるのは、他でもない刹那だ。だからこそ、俺達が命に変えても守らなきゃいけねぇ存在だ。でもなにより、刹那本人がその扱いを望んでねぇ。」
「そ、総悟…」
「特別扱いを受ければ受けるほど、刹那はここに居づらくなるんでさァ。どんな事があっても、対等でいたいと思う人なんでね。……ま、勝敗はお預けになったにしろ、あのしょーもない刹那の頼み事くらい聞いてやらァ。行くぞ、刹那」
「え、あ、ちょっ、ちょっと!」
半ば強引に強い力で引っ張られ、刹那は沖田になされるがままに連れていかれる。
「あ、あの、近藤さん、トシ!ありがとう!それから、ゴメンなさい。」
去り際にぺこりと頭を下げて、その場からそうそうに去っていく。
取り残された二人は、沖田が何を意図してここに刹那を連れてきたのかようやく理解出来ては、大きくため息をこぼした。
「……ありゃ、マジだな総悟の奴。」
「そうだなぁ。でもあいつ、分かってんのかねぇ。刹那の傍には万事屋のアイツがいる。ちょっとやそこらの略奪愛で盗める代物じゃねーぞ、ありゃァ。」
「なんだかんだ、刹那さんの事を大事に思って行動しているのは総悟だな。俺たちはまだまだ、注意力が足らねぇや。」
「……しゃーねぇな。アイツだけに任せとくのもなんだし、俺もついて行ってくらァ。」
「……頼んだぞ、トシ。さっき調べた一件によれば、もしかしたら刹那さんの身が奴らに狙われかねんからな。」
「へーへ。分かってらァ。」
近藤に背中を預け、土方は去って行く。
稽古場を出て、二人を探そうとキョロキョロ辺りを見渡すと、既に姿はなかった。
「くっ、はえぇんだよあのバカッッ!!」
土方は敷地内で二人の姿を必死に探し始めたのであった。