三.侍 時々 姫
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彼女の容態が悪化、もしくは何かあるといけないために、真選組の上層部は交代で見張りをつけていた。
山崎の担当の時間になった頃、寝付けない刹那は月を見ながら彼と他愛ない話をしていた。
沖田と土方とは頻繁に接点があるものの、山崎は普段密偵で外に出ていることが多いため、こうしてゆっくり話せることはあまりなく、貴重な時間だった。
「それで、酷いんですよ!自己責任なのに、奴当たりで俺のせいにしてきて…」
「ははっ!トシらしいね。」
楽しそうに笑う刹那を見て、山崎は心の中でほっとしていた。
カラ元気なのかもしれないが、彼女に考える時間を与えるよりは、こうして何気ないことで気を紛らわせるのが一番だと思っていた。
自分の話が少しでも、彼女の心を穏やかにさせられればいい、そんな思いで真選組の話をいろいろとしていると、勢いよく襖が開いた。
「なんでぇジミー。こんな時間まで何してんでぃ」
「お、沖田隊長!」
突然現れた沖田に、山崎は真夜中という事も忘れ驚いて大きな声をあげ、急いで口を塞ぐ。
「山崎さんは悪くないよ。眠れない私のために話し相手になってくれてただけだから。」
「へぇ…。じゃあ、俺と交代」
「…え?」
「姉御の見張りは、こっから俺がするから。ジミーはさっさと寝ちまいな」
「え、あの…はい」
すっかり刹那との会話を楽しんでいた山崎は、有無を言わさずの沖田の腹黒い笑顔を見ては、名残惜しさを感じながらも肩を落として部屋を出て行った。
「それじゃ、おやすみなさい。刹那さん」
「山崎さん、ありがとうございました。またお話しましょうね」
沖田は山崎の背中が小さくなっていくのを見送った後、静かに襖を閉めて刹那の隣に腰を下ろした。
「眠れないんですかィ。姉御」
「あーうん、ちょっと。ほら、昼間意識失ってたからなんだか寝付けなくて」
「夜更かしは肌によくねぇですぜ。」
「いやー、もうそういうの気にする歳でもないんだけど…」
ははっと苦笑いを浮かべて後ろ頭をかく。
目は見えなくとも、刹那は明るかった。
それどころか、自分の様子が先ほどと違う事に瞬時に気づき、こちらを見てはクスリと小さく笑った。
「総悟、何かいい事あった?」
「…いい事?」
「何となくだけど、なんかすっきりしたような声してるから。」
「…!」
彼女の鋭さには、本当に恐れ入る。
元々勘が鋭い人だとは思っていたが、まさか声だけで人の心境を察する事ができるとは。
本当にこの人には敵わない。
沖田は肩で息をした後、刹那をまっすぐに見て口を開いた。
「姉御、昼間はすいやせんでした。自分のせいで、とかマイナス思考になっちまって。確かにあの時俺があいつらをすぐに仕留めてりゃ、姉御がこんな事にはならなかったかもしれない。でももう事は起きちまった。だから、見えるようになるまで俺が今から姉御の目になりまさァ。視力がないんじゃ、いつもの強い姉御はしばらくお休みにしてくだせぇ。」
「…ありがとう。」
刹那は今の沖田の言葉を聞いて、心からほっとした。
気にかけていた二人のうち、一人は既に立ち直ってくれた。
大方彼の心に響くような言葉をかけたのは、他でもなく土方であろうと予測がついた。
彼に今度会った時、お礼を言わねばと心の中に決めてから、刹那はもう一度沖田の方に顔を向けた。
「やっぱり、前向きな総悟の方が、私は好きだな。意地悪なところは別として」
そんな刹那の言葉に、沖田は不覚にもドキリと鼓動を高めた。
「…意地悪なのは姉御でさァ…。」
「え?」
沖田の小さな声が聞き取れず、刹那は首を傾げる。
「こんな男しかいねぇ屯所で夜中まで起きて、和気藹々と話するなんざ、どうかしてますぜ。誘ってるって思う奴がいたらどうするんスか。しかも今ならもれなく目隠しプレイ」
「え、目隠しプレイ?何?って、そ、総悟くん!?」
実像は見えなくとも、総悟の気配が一瞬にして自分の至近距離まで来た事は何となくだが分かる。
けれども今彼がどんな顔をしていて、何をしようとしているのかまでは分からない刹那にとって、酷く動揺を誘った。
思わず後退ろうとするが、沖田がそれを許さなかった。
両手を刹那のサイドへつき、押し倒すように威圧をかける。
パサリと音を立てて布団の上に横たわった刹那は、不安そうな表情をしながらじっと沖田の方を見る。
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた沖田は、そのまま刹那の耳元でそっと囁いた。
「早いとこ寝ないと、食っちまうぜ、刹那。」
「ひゃっ!わ、分かった!寝ます、寝ます!」
ぞくりと背筋が立ち、刹那は慌てて首を縦に振った。
しかし沖田は体勢をかえようとせず、そのまま刹那の横に寝ころんだ。
「…そ、総悟??」
「今日は刹那の横で寝かしてもらいやす。他の狼が食いにくるといけねぇんで。」
「え、あの、ま、マジでか。」
「…ちゃんと寝付くまで見張ってるから、早く寝てくだせぇ。俺の気が変わる前に。」
そう言って、沖田は刹那の手を優しく取り、握りしめた。
よほど疲れていたのか、上から目線の言葉とは裏腹に、即寝息を立て始めた彼に思わず噴き出した。
「たまには子供っぽい事するじゃん。…よかった。」
そう独り言を呟いては、沖田の方に顔を向けたまま刹那も沖田の手の温かさに和みながら、眠りについのだった。