三.侍 時々 姫
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刹那はいつものように買い出しへと出かけ、今日は新八も荷物持ちとして同行した。
毎回一週間分買い溜めをする刹那の荷物をいつも見ては、手伝いたいと思っていた新八にとっては、ようやく頼ってもらえるようになったと浮き足立っていた。
「今日もたくさん買いましたね、刹那さん。」
「ふふ、あそこのスーパーって、結構安売りしてること多いからね。沢山食べる人が豊富な『万事屋銀ちゃん』には打ってつけでしょ?」
得意げに微笑む刹那を見て、改めて綺麗な人だと実感する。
身体中に傷を負っていると以前話していたけれど、顔は傷一つつくことなく、透けるような白い肌がより一層輝きを放つ。
出会った時は悲しみに満ち溢れた表情ばかりしていたが、今は心から楽しそうに生活を送っているのが、伝わってくる。
そんな刹那の様子に安堵しながらも、新八は他愛ない話で帰り道を堪能していた。
だが、事件は突然やってくるものだ。
二人が歩いていると、急に後方が騒がしくなった。
刹那は元々聴力は人並み外れており、誰よりも先にそれに気づき、足を止めて振り返った。
「どうしたんですか?刹那さん。」
「なんか騒がしいな…」
どこか胸騒ぎがする気がした。
だが今は新八とふたりだ。下手に厄介事に巻き込まれたくはない。
「いや、何でもない。行こうか」
余計な不安感を抱かせまいと、刹那は優しく新八にそう言って足を動かし始めた。
しかし刹那が予想していたよりも早く、その騒動の元凶は近づいてきていた。
複数の笠を被った人物が、必死にこちらへ走ってくる。
そして少し距離を開けた先に、見慣れた顔の、見慣れた制服を来た二人が追いかけている姿を目にした。
「待てコラァーーッッ!!」
その声を聞いて、確信した。
不審な格好をした奴らを追いかけているのは、間違いなく真選組の副隊長である土方と、一番隊隊長の沖田だ。
何やら切羽詰まった様子で追いかけている集団は、一体なんだというのだろうか。
気にはなるが今は刀も何も持ち合わせていない。その上新八も一緒となれば、下手に手を出さない方がいいだろう。
しかし、刹那の配慮は無駄に終わった。
新八が見慣れた二人の声を耳にした時、それに興味を示したのだ。
「ねぇ刹那さん、あれって…」
「うん、なんかこっち来るね。」
近づいてくるに連れて、それが男だということと両手に何か大事そうに抱え込んで走っている事だけは分かる。
もう少し目を凝らしてみれば、それが瓶で中に液体のようなものが入っているのまで確認した。
「なんだろ、あれ。攘夷志士の人達かな。」
「さ、どうだろうね。」
ようやく姿がはっきり見えたところで、刹那は奴らの手にするものに目を見張り、思わず硬直した。
「新八、ちょっと隅によった方が…」
道を開けるように言おうとした矢先、新八は小さな小石につまずいてその場に倒れ込む。
彼が手にしていた買い物袋も見事散らかり、偶然ではあるが彼らが走ってくる道の妨げになってしまった。
「なっ…何すんだテメェらッ!!」
「邪魔すんじゃねぇッ!」
奴らは自分たちが、行く手を阻む者だと勘違いし、手に持っている小瓶の蓋を開け、勢いよく投げた。
「まずいーーッッ!新八!!」
人一倍五感に優れている刹那は、その液体が危険だと察知し、急いで荷物を投げ出して、寝転んでいる新八を庇うように立ち塞がった。
「刹那、さん?」
一瞬何が起きたのかすら、分からなかった新八は、急に自分の前に立った刹那に違和感を抱く。
「しまった、一人にしかかかってねぇッ!」
「ばか、今はとにかく逃げることだけ考えろやっ!深追いするなっ!」
真選組に追われている連中は、構うことなく前を疾風の如く過ぎ去っていく。
何だったのだと言いつつ起き上がり、袴に着いた砂埃を叩いて払う。だが刹那はいつまで経っても動かない。
「…刹那さん?」
もう一度名を呼べば、その場にしゃがみこみ、肩を震わせていた。
何かあったのかと彼女の正面に立てば、先程逃走したヤツらが手にしていた液体が顔にかかり、目を強く瞑っていた。
「ちょっ…刹那さん?!刹那さん!!しっかりしてください、どうしたんですか?!」
新八は激しく動揺し、大声をあげる。
ようやく刹那達の元へ到着した沖田と土方は、その様子を目の当たりにして顔色を変えた。
「姉御ッ!何があったんですかぃ!……まさかっ!」
「あの液体、浴びたのか?!…おいテメェら、あいつらを追える所まででいいから追えっ!俺ァこの重傷者を病院まで運ぶ!」
土方たちの後方についていた部下たちは、了解の合図値をうってはそのまま駆け抜けた。
その場には土方と沖田が残った。
「おいしっかりしろっ、刹那!くそっ!よりによって目にかかるなんざ…どうして避けなかった!」
土方の表情を見れば、今彼女がどれだけ危機的状況にいるのかは明白だ。
新八はカタカタと口を震わせながら、ある結論に至り、震えた声で呟いた。
「も、もしかして転んだ僕を庇って……」
「なに?!」
土方がすかさずそれに反応したが、気づけば沖田が刹那を抱きあげ、走り出した。
「おい志村ァ!ひとまず刹那に治療を受けさせる!てめぇは万事屋に帰ってあの銀髪にでも知らせろっ
!」
「刹那さんは…刹那さんはどうなってしまったんですか?!僕のせいで、僕のせいで……っっ!!」
「うるせぇ!今は誰のせいとか言ってる場合じゃねぇ、一刻を争うんだ!」
「そん、な…」
新八は全身の血の気がさっと引いていくような感覚になった。
土方は無線で真選組の連中と連絡を取り、切羽詰まった表情で指示をだす。
刹那を抱き抱えた時の起きた沖田の顔も、酷く険悪な顔をしていた。
ほんの少し前まで平穏な日常を送っていたのに。
どうして、なぜ。
新八はそんな自問自答を繰り返し、フラフラの足で万事屋へと戻ったのだった。