二.真選組×万事屋編
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全身満身創痍となった刹那は、真選組の口利きにより専属の医者を手配して自宅治療となった。
右肩と肋骨は完全に折れており、手のひらは計十針ほど縫う始末。
平然と笑っている刹那が不思議なほどの容態だったが、彼女のほころんだ顔を見て、内心誰もがホッとしていた。
とはいえ、絶対安静の状態が四日も続くとさすがに飽きてくる。
刹那は横になったまま悶え始め、隣で自分が動かないように見張っている銀時に声をかけた。
「ねー、もう無理。動きたくてしょーがないんだけど。っていうか、動いていい?」
「駄目に決まってんだろ。何当たり前のように動こうとしてんだテメェはっ!通常なら寝たきりで一ミリも動けねぇほどの重傷なんだぞ!」
「いやーほら、私って回復能力高いしさ。もう結構動けるんだよ実は。」
「んなワケねぇだろーがっ!仮にも俺と交戦したんだぞ。そんなすぐ治るわきゃねーだろっ!」
「ちぇ…」
刹那は不貞腐れた表情を浮かべて、口をとがらせる。
銀時はそれを直視せぬよう、手に持っていたジャンプに目線を映した。
退屈なものは退屈なんだ。
刹那は相手もしようとしない銀時をじっと見て、何かひらめいたような顔をした。
「…ねぇ銀時。お願い、ちょっとだけ…」
「…は?!」
銀時はその声に飛び跳ねて思わず壁まで後退った。
「なななななな何、お前!何急に女みてぇな厭らしくて甘えた声だしてんのっ!?っつーか、どっから出したんだよ今の声っ!何がしてぇんだよテメェはっ!銀さんおちょくってんのか?!それとも何か、ちょっとだけってなんだよ!俺の息子をちょっとだけい…」
「急に話を下衆にすんじゃねぇ。」
妄想に妄想を重ねた銀時に、すかさず鋭い目線と威圧的な声が刺さる。
銀時はそれにより現実に引き戻され、肩で息を吐いた。
「お前さんね、いくら退屈だからって、俺をもてあそぶのはやめてくんない?俺だって意外と心はガラスなんだよ?もう、すんげー軟なガラスハートなわけよ。」
「あーうん、そうね。」
銀時は急につれなくなった刹那に、苛立ちを覚える。
そして今度は、銀時が何かを思いついた。
「そんな退屈なら、仕方ねぇな。テメェが完治した時にと思ってたんだが…」
「え?何?なんかあるの?」
「ちょっと待ってろ」
銀時は真剣な表情で刹那にそう言い、リビングへと向かった。
何があるのだろう、と刹那は心を躍らせながら待ち続けていると、再び寝室に戻ってきた銀時はニヤついた顔をしており、背筋がぞっとした。
「ま、待って銀時、お前何考えて…」
「ほら、約束しただろ?猫耳と尻尾。」
「なっ…こ、こんな時に何言ってんの?!っていうかそんなんつけるの絶対やだから!」
「おいおい今更何言ってんだよ!俺のロマンをまたぶち壊す気か?!だいたい男に二言はねーだろっ!」
「都合のいい時男扱いすんじゃねーよっ!っていうかほら、私まだ安静にしてなきゃいけないし…ね?」
「テメェこそ都合のいい時に女っぽい物言いとけが人ぶってんじゃねーよっ!さっさとつけやがれこの野郎っ!!」
銀時は横になっている刹那の上に上乗りし、顔のサイドに両肘を置いて身動きを取れ無くする。
慎重にかちゅうしゃ式の猫耳をつけようと、狙いを定める。
「ば、バカバカバカッ!やめてったら、放してよ!」
軽く涙目になった刹那はなんとか抵抗しようとするが、体勢が悪いせいで上手く力が入らない。
ニヤニヤした銀時の顔が徐々に近づき、互いの口が触れそうになるところまで近づいたその時。
今までふざけた顔をしていた銀時の表情が、一瞬にして真顔になった。
刹那はそんな銀時を見て、思わず硬直する。
「ちょ、銀時…?ち、近いんですけど…」
「なぁ、刹那。」
至近距離で名前を呼ばれ、ドキリと鼓動が波強くを打つ。
「…あの時、オメェが俺になんて言おうとしたのか、もっぺん言ってくれねぇか?」
「あの時…?」
「ほら、あの時だよ、あの時。オメェと屋根の上で乳繰り合ってた時だよ」
「乳繰り合ってたって言うなッ!!」
「そこはいーんだよなんだって!ほら、早く言えよ。」
「…あー…ゴメン、もう忘れちゃった。」
銀時のまっすぐな目が直視できなくなった刹那は、顔を横に向けた。
が、銀時はそれを許すことなく無理やり手で自分を見るように顔を正面に向けなおした。
「ちょ、銀時!」
「なーにが『忘れちゃった、てへっ!』だよ!可愛く言ってんじゃねーよ!不覚にも可愛いと思っちまっただろーが!っつーか忘れたなんてぜってぇウソだろ!いいから吐け!吐けコノヤロー!」
「てへ、何て一言も言ってねぇだろーがっ!そもそも言ってる意味がよく分かんないんですけどッ!っていうか早くそこどいてよ!」
「はぁ?なんだよオメー、もしかしてこの至近距離の俺に不覚にもときめいちゃってるわけ?まぁ、そうだよなぁ。この前俺に自分から欲しがるようにキスしてきたくらいだからなぁ。」
「ときめいてねーよっ!っていうか勝手に記憶すり替えてんじゃねぇ!欲しがってねぇし、あれは致し方なくだ!」
「いやー、俺あの時正気じゃなかったから、いまいち刹那の柔らかい唇の感触覚えてないんだよね。」
「…柔らかいって言ってる時点で覚えてんじゃねーのか、おい」
「いーや、やっぱガサガサだったかな。と、いうわけでもっかい試していいか?」
「ふ、ふざけんのも大概に…!」
先ほどよりも自分の自由を支配している銀時の力が強まる。
全くもって動けない刹那は、ひしひしと焦りを感じた。
「…逃げるなよ、刹那」
「---っ!!」
耳元で囁くように、銀時は低い声でそう言った。
全身の力抜けそうになる。こんな感覚は今までに感じたことはない。
刹那は耳から全身へと熱を帯び、頬を赤に染めた。
「こうして明るいところで見れば、テメェが俺を嫌がってるわけじゃねぇってのがよく分かるぜ。ったく、悪かったよ、この前は。総一郎と一緒にいる時のオメェが、やたら女っぽい顔すんるんで、俺もつい…理性がぶっ飛んじまってなァ。」
「いや、それは…」
「考えりゃ分かる事だった。オメェが何に怯えてんのか。何を恐れてんのか。それなのに俺はテメェに、天人達がしてきたのと同じ事をしちまった。テメェの心が他所向いてるのに腹立って、無理やり自分のものにしようとした。みっともねぇ話だ」
「…銀時」
「でもな、刹那。いつまでも逃げるな。お前が恐れている事は、もう過去なんだ。二度と起きることじゃねぇ。俺が起きさせやしねぇ。だからいつまでも逃げ続けるのはやめろ。」
「…」
「嫌な過去は上書きすりゃいーだろ。俺はテメェが過去にどんな経験してよーが、どんな事を抱えていようが別にいいんだよ。テメェはテメェだからな。だから、俺がテメェの怯えてる過去をさっさと上書きしてやる。もしかしたら、人が違ったら案外いーもんかもしれねぇだろ?だからテメェは俺に黙って食われろ…」
「ぎ、ん…」
吐息が肌に触れる。
銀時のまっすぐな赤い瞳が、目を逸らせなくする。
刹那の体は全身熱を帯びているのに、まるで凍ったように体が動かなくなっていた。
この感覚を知らない。この気持ちを知らない。
時折魅せるこの獣のように欲を露にした銀時の表情からは、逃げられないーーー。
時間が止まるような気がした。
銀時と刹那の互いの唇がもう少しで触れようとしたその時。
「ちわーす」
寝室の襖がスパンと音を立てて勢いよく開いた。
訪れた人物の目には、どう見ても身動きがとれない刹那をいいことに、銀時が馬乗りになって夜這いをかけようとしている光景にしか映らない。
気づけば怒りのあまりに手が震え、刀を握っていた。
銀時はその訪問者の姿を見ては、ぶわっと一気に冷や汗をかき、固まった。
「そ、総一郎君…」
「そ、総悟!?」
「…旦那ァ、姉御が動けないのを良いことに、何してんですかァあんた」
「ち、違う誤解だ!これは夜這いとかじゃなくて、その…こいつに熱があるかもしれねぇってデコくっつけて熱計るとこだったんだよ、な?!」
下手な言い訳をするが、沖田の怒りは納まるどころか勢いを増した。
「そこまでクソ野郎だとは思いませんでしたぜ。…このクソ天パ野郎!!死んじまいなァ!!!」
「あああああああっ!!」
銀時まで全速力で駆け寄り、思いきり蹴飛ばして窓の外へと吹っ飛ばす。
沖田はそのまま刹那を横抱きにし、玄関へと再び足を動かした。
「え、ちょ、ちょっと、どこ行くの?!」
「姉御が完治するまで、ウチで預かりまさァ旦那。こんな野獣がいるところになんぞ置いておけねぇ」
「え、ちょ、ちょっと待って、そ、総悟ってば!!」
「うるせぇやぃ。もう俺は決めた。旦那は信用しねぇ」
そう言って振り返る事もなく、沖田は刹那を真選組の屯所へと連れて行った。
買い出しに出かけていた新八と神楽が刹那の姿がない事に気づき、銀時が再び袋叩きにされるのは、これからほんの数分後。