二.真選組×万事屋編
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買い物に行くと言って出ていった後、神楽と新八は刹那がいないと退屈なのでと言って出かけてしまった。
たまには刹那を一人のんびりさせてやって下さい。と怪訝そうな顔で出かけた新八の言葉を気にかけつつも、銀時はソファで寝転び家で彼女の帰りを待ち続けた。
「一人のんびり、か。あいつにそんな時間がいるのかねぇ、ほんとに。」
誰にも聞こえるはずのない独り言をこぼし、天井を見上げる。
「いらないよ別にそんな時間」
「そうだよなぁ、だってアイツずっと独りだったんだし、むしろアイツに必要な時間は……」
ぼんやりしていた銀時は、そう返事が返ってきたのに無意識に会話を続けたが、はっと我に返り勢いよく起き上がった。
「おおおおお驚かすなよお前!つか、その無意識に気配消すのやめろよっ!心臓に悪ぃだろーがっ!それとも何、銀さんの心臓止めたいワケッ?!」
いきなり本人が現れて、心臓をバクバクさせて焦る銀時に対し、刹那は冷静なまま向かいのソファに腰を下ろした。
「いや、別に今気配消してないよ。普通にあんたが考え事して私が帰ってきたのに気づかなかっただけでしょ。ったく、ほんと昔からビビりなところは変わらないなぁ。」
「…」
銀時は、ふぅと胸をなで下ろし、刹那の顔をじっと見た。
今朝見た時よりも、顔色は随分と良くなっていたことに気がつく。
それにしても、物音すら聞こえないほど刹那の事を真剣に考えていたとは。
銀時は癖の着いた髪をわしゃわしゃとかき、小さく息をこぼした。
「随分時間かかったな。買い出しに。」
「あぁ、帰り道にスーパーの争奪戦に負けて、落ち込んでるマヨネーズ好きのお侍さんに会ったからね。お裾分けしてきたらちょっと予定より時間かかっちゃった。」
「マヨネーズ好きのお侍さんって、お前それ……」
そう言われて頭の中にパッと土方の顔を連想する。
またこいつはアイツらと親しげにつるんでたのか。
そう思うと胸のどこかがモヤモヤし、表に出さないよう努力した。
「っていうか、新八と神楽は?」
「オメェがいねぇとつまんないからって出かけたよ。昼ぐらいには戻ってくるみてぇな事言ってたけど。」
「そう。じゃあ、お昼ご飯用意しとかないとね。」
今しがた帰ってきたばかりの刹那は、休憩する間もなく立ち上がろうと腰を上げた。
それを見た銀時が瞬時に彼女の手を引き、無理やり座らせた。
だが先程までのようにソファに座ったのではなく、強い力で引き寄せられた刹那の体は銀時の膝の上にふわりと落ちた。
「ちょっ…あぶな」
「いいから、少し休憩しろ。お前家に来てからずっと動きっぱなしだろ。」
「いや、普通に寝てる間は休憩に入るでしょう」
「昨日ほとんど寝てねぇ奴がよく言うなァ。目の下ァ、クマできてんぞ」
「ーーっっ!!」
銀時は刹那の反応を見て、やはりと思った。
昨夜自分が全く気づかずにいると思っていたらしい。
どうして何でもかんでも隠したがるのかは、大方検討がつくが、刹那自身から話してくれれば、と思うばかりで自ら行動はしなかった。
それでも、無理に笑顔を取り繕う刹那を、無理に平気そうにする刹那をもう見るのは嫌だ、と。ここらで一旦口を出した方がいいと銀時は判断した。
「お、起きてたの…?」
「お前が隠したいならそれでもいいと思ったがな。だけど、お前の性格がどんなのか、さっき銀さん思い出しちゃったわ」
「なんでもいいけど、降ろしてよ」
「やだね。今下ろしたら、オメェまた適当にあしらって俺から逃げるだろ。」
「なっ…!!」
銀時の言葉に、刹那は言葉を詰まらせる。
そんな様子を目の前にした銀時は、再び刹那の顔を曇らせるような発言を続けた。
「オメェは甘え方を知らねぇ。人の頼り方も知らねぇ。辛い時辛いって言えねぇ。助けて欲しい時に助けてとも言わねぇ。だから、お前の限界を察知して、俺がお前を止める事にした。」
「い、言ってる意味が全然わかんないんですけど…!」
「ホントに分かってねぇの?お前。俺が気づかないとでも思ってるわけ?何年お前を見てきたと思ってんの。何年お前のこと想ってきたと思ってんの?」
刹那は銀時の赤い瞳の強いまなざしから、逃れられなくなる。
こういう時の銀時は、苦手だ。
自分ことを一人の女として見る、『男』の顔だ。
刹那の腰にまわした銀時の腕に力が入り、互いの顔の距離はより一層縮まった。
「ちょ、ちょっとぎん…」
「俺は生きてる限りお前の味方だし、お前の事を想う。お前が例えどうなろうと、その意思は変わらねぇ。お前がいつも俺の些細な変化に気づけるよう、常に見てるように、俺もお前を見てんだよ。」
「わわ、ちょっな、なにそれ!!」
刹那の気持ちに的中したのか、透き通るような色白い肌が赤みを灯す。
銀時はその反応が肯定の証だと思うと、自然と嬉しくなり顔がニヤけた。
「あれれぇー?赤くなっちゃってぇ。刹那ちゃん可愛い!!」
「ちゃ、茶化すなっっ!!」
「…まぁ、そういうわけだから、これからはちゃんと言え。腹壊したでも、機嫌が悪ぃでも何でもいいから俺に真っ先に言え。お前が俺に一番気ぃ使ってんのもこっちは気づいてんだよ。今まで心配出来なかった分、これからは期間が空いた分もさせろ。わがままも言え。俺にそうしていいのは、オメェだけだ。」
「…」
「あぁ、一応言っとくけど、男、子供、結婚系の類はなしな。俺ァそれだけはぜってー無理だから。」
「…ふっ!もう、しまらない男だな。」
刹那は銀時らしい発言に、小さく笑った。
その笑顔を見て、銀時もつられて笑う。
「お前の笑顔が本物かどうかくらい、俺にとっちゃすぐわかんだよ。隠すの下手くそなんだってことに気づけバーカ」
「…わかった。ゴメン」
「いや、俺もお前が自分から言うの苦手だって分かってたのについどS心が出ちまってなァ。お前から俺に甘えてくる所を妄想したら、もーちっと様子見ようかなって。」
「ば、ば、馬鹿じゃないの?!なにそれ!私手のひらで踊らされそうになってたってこと?!」
「…いや、踊ってねぇ。踊らせたいけど一切踊らねぇどころか舞台にも立ってねぇよ、お前」
こんな時にもとんちんかんな方向にいく刹那の思考に、少しばかり銀時は呆れてため息をこぼした。
「ま、わかりゃいーよ。で、どーしたんだよ昨日は。身体、苦しかったのか?」
「うん、ちょっと派手に動きすぎたみたい。次からは自重するから。」
「そーしてくださいね。刹那さん人の言うこと聞かねぇから、戦場に立つなって言っても立つでしょ」
「うん。いや、むしろもうその言葉が聞こえない。」
しれっと答える刹那に、銀時は頭を抱えて、またもや髪をかきむしった。
「まぁいいや。そんときゃ俺が動くわ。つーか、もういいからオメェはとりあえず寝ろ」
「え、だって昼ご飯…」
「お前はみんなの母ちゃんか?!母ちゃんってもんはもっとこう、口うるさくてやかましくて自分の話ばっかするような奴だぞ?!」
「え、うん?そ、そうなの?」
「だからお前は母ちゃんじゃねぇ!昼飯だって俺が作ってやるから心配すんな。今は寝ろ。そのクマやべぇから。」
「わ、わかった。」
「じゃ、横になれ。」
「え、え?!」
銀時の早い返しと同時に、突然ふわりと持ち上げられたかと思えば、気づけば既にソファの上に横になり、頭は銀時の膝の上にのっていた。
天井の方を見れば銀時の優しい表情が見える。
こんな風にしてもらったことが生まれてこの形ない刹那は、今度は耳まで赤らめた。
「ちょ、ちょ、銀ちゃん!!」
「ぷぷッ、〝銀ちゃん〟だってぇ。オメェテンパると俺の事そう呼ぶのな。ま、優しい大人の銀時様はちゃんとオメェが寝付くまでこうしといてやらァ。オメェは一人にする方が良くねぇからな。」
「…うん。」
少々強引にはやったが、結果的に刹那は銀時のそれをすんなり受け入れた。
やはり、彼女にはこれくらいしてやらないと、甘えられないのであろう。
ずっと一人で生きてきた。ずっと一人で背負い込んできた。刹那にもう、一人の時間は作ってはいけない。これからは鬱陶しいと思われるくらい、常に誰かがそばに居てやらなければ、寂しさで埋められた心を解いてやることはできない。
どうやら今の刹那を見れば、銀時の考えが正しいものだったと安堵する。
普段は自分よりも大人の顔をするはずの刹那も、今や子供のようだった。
そんな刹那の姿を見て、少しばかり微笑ましく思っていた時。
「ねぇ銀時。」
「あんだよ。早く寝ろって言ったろ」
「手ぇ、繋いでいい?」
「…あぁ。いつだって繋いでやるよ」
そっと不安げに銀時の手を摂る刹那を目の当たりにした銀時は、ぎゅっと強く握りしめてやった。
その瞬間、刹那は小さな寝息を立て始めたのだ。
「っつーか寝るの早!もーちっとこのシチュエーションにドキドキするとかしてくんないかなぁ!銀さん結構頑張ったんだけど!?……たく。しゃーねぇなぁ。俺もこいつに心底甘ぇのな。」
不満の声をぶちまけても起きず、すやすやと眠る刹那の寝顔を見てしまっては、何も文句は言えない。
銀時はしばらく、刹那のその飾らぬありのままの顔を堪能し、そっと昼飯を作りに台所へと足を運ぶのであった。