二.真選組×万事屋編
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「くそっ、なんでだよ!何で開始20分しか経ってねぇのにもう完売なんだよ…せっかく俺ァ非番もらって早起きして来たっていうのによぉ…」
土方はスーパーの帰り道にある公園のベンチに腰を下ろし、嘆いていた。
昨日見た新聞のチラシに、近くのスーパーが特売セールを開催するという情報が入っていた。
そこには自分にとって必要不可欠なもの、マヨネーズの超特価価格セールのアピールが全面に出ており、昨日から今日は非番をもらうと決心していたのだ。
実際スーパーに行けば、自分よりも日頃買い物慣れをしている主婦たちが店内で只ならぬ争奪戦をしており、普段あまりこういうところに来ない土方は気力負けして、結局一つも買う事ができなかったという始末。
給料日前の土方にとって、ストックしてあるマヨネーズも尽きかけており、絶望の境地に立たされていた。
明日からどう生きればいいのだと、投げやりになっていたその時。
視界の中に、買うはずだったマヨネーズが姿を現したのだ。
「はい、どうぞ。っていうか、心の叫び駄々洩れだよ」
「て、テメェは…!!」
あまりのショックに全く周りが見えていなかった土方は、突然の事に驚いて硬直した。
気づけば隣には、昨日真選組を狙う天人達をほぼ一人で薙ぎ払った刹那の姿がそこにあった。
今日は昨日とは違い、女性ものの着物を着ていて髪を縛り、どこからどう見ても普通の女の姿をしていた。
「私二つ買ったから、一つあげるよ。欲しかったんでしょ、マヨネーズ」
「…いや、いい。お前にこれ以上借りは作りたくねぇ。」
「借りなんて一つもやった覚えないんだけど。」
「昨日十分借りたさ。っていうか、マヨネーズ早くしまえよ」
「いいから受け取ってよ。あまりにも安いから二つ買ったけど、うちはマヨネーズ隠し味にしか使わないから、そんなにいらないし」
刹那はそう言って、半ば無理やり土方にそれを持たせた。
「…わりぃな。」
「そこは謝罪の言葉じゃないでしょう、トシ」
「…ありがとよ。」
「はい、よくできました」
「--っ!テメェ俺をおちょくってんのかッ!」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる刹那に、土方は思わず突っかかるが、彼女の顔をまじまじと見たところでそれを止めた。
「なぁ刹那。おめぇさんちゃんと飯食ってるか?」
「え?」
「顔色あんまよくねぇぞ。もしかして、昨日のケガのせいか?」
「…まじでか。」
土方にまで顔色が悪いという点に気づかれてしまった事に、刹那は酷く落ち込んだ。
「安心して、あんなケガのせいじゃない。顔が青白いのは、ちょっと寝不足なだけ」
「お前もしかして…」
「えー…。真選組の人は、職業柄か結構勘が鋭いんだね。総悟にもこの前痛いとこつかれちゃったし、嫌になるなぁ。そんなに隠し事下手なのかな、私。」
「…」
刹那は、あーあと言いながら背伸びをして、目を閉じた。
土方は心の中で、再度彼女の様子を見ながら考えた。
天人達にとらわれ、いろいろな実験を行ったせいで恐らく体に負担がかかり、今まさにその負担が体に現れているのだろう、と。
それなのに、あれだけの戦闘ができるということは、自分とは比べ物にもならない程修羅場をくぐってきたというのだろう。
そして自分のことを自ら他人に話すことはしない。
それは人一倍自分よりも他人を大切にしているからだ。
今なら沖田が言っていた、彼女に興味を抱いたという心理が分かるような気がして…胸糞悪くなった。
「お前の体調の事、あいつらは知ってんのか?」
「いや、知らない。というか、知ってほしくない。変な気を使われたくないからね。」
「だが、いつまでも隠し続けられる事じゃないだろ」
「…私さー、あの日決めたんだよね。もうこれからは、ポジティブに生きようって。」
「…あ?」
「確かに嫌ではあるよ。人よりも傷が早く治る人間離れした体も、半ばインチキして得たこの強さも。いつ死ぬかも分からなくなったこの体も。」
「…」
土方が予想していた事は、今の刹那の言葉で確信に変わった。
彼女はこんな細く華奢な体で、一体どれほどの重みを背負っているのだろう。
そのくせ万事屋達は、彼女の存在を大きく捉え、大切にし、頼ってもいる。
そうなれば、彼女は万事屋の連中を心配させまい、と無情に振舞う。
自分が自分でいられる環境が、この女にはないのだろうか。
刹那の顔を見てそう考えていると、彼女はそのまま話を続けた。
「でも、もう過ぎてしまった事は仕方がない。だから毎日を楽しく生きようって決めたの。毎日笑って、毎日疲れて。人とのつながりを大切にして、死ぬまでみんなを守り続けたい。だから、正直体調がどうのこうのって気遣ってる時間があるなら、それよりも笑っていたんだよ。」
切なげに空を見上げる刹那の横顔は、酷く美しく、また心を痛めた。
「って言っても、昨日はさすがに無茶しすぎたから。次からはちょっと考えて闘うから今日程体に影響が出るようにはならないよう努めるけどね」
「そうしな。せっかく自由になったんだ。死に急ぐような真似は控えとけ。まぁでも昨日は、ありがとよ。総悟は一応俺たち真選組の一員だからな。動けなくなったアイツの代わりにテメェが闘ってくれたんだ。恩に着るぜ」
「総悟は私の恩人だからね。そういえば、ケガの具合はどう?」
「あぁ、あいつならピンピンしてんぜ」
「そう、良かった。」
沖田の件で安心したのか、刹那はやんわりと笑みを浮かべ土方を見た。
一瞬、その優し気な表情が土方の心の中にあり続ける、ミツバの笑顔と重なった。
さっと風が吹き、彼女の髪が靡く。
深緑の艶のある髪が、一本一本煌びやかに舞う。
土方は驚きの表情を見せた後、力を抜いて笑った。
ーーーなるほど、総悟がこの女に惹かれる理由がわかったぜ。
性格も違う。見た目も違う。
それでも、こうして人の事を想って笑う温かい心は、もう二度と戻ってこない沖田の姉、ミツバとどこか似ているような気がした。
「さて、と。あんまり遅くなると心配するからそろそろ帰るわ。」
「待てよ、マヨネーズのお礼だ。家の近くまで荷物持ってってやらァ」
「え、いいよ。何でみんな私を非力扱いすんの。別にこれくらいの量なら全然平気なんですけど。」
「うるせぇ、黙って甘えとけ。テメェは甘え方を知らねぇ子供と一緒だ。こういう時は素直にありがとうって言うもんだぞ」
「…ありがとう」
冒頭に自分がやった事を仕返しされたような感じになった刹那は、少し不貞腐れた顔をして小さな声でそう土方に返した。
満足げに笑った土方は、刹那の買い込んだ荷物を持ち、万事屋銀ちゃんへと彼女の隣を歩みながら向かうのであった。