二.真選組×万事屋編
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「……っっ!」
銀時は足を止めた。
刹那がそれに巻き込まれるのを見てしまったから。
目の前が真っ暗になり、全身の力が抜けそうになる。
刀を持っている刹那であればこれくらいの瓦礫に埋もれようが自力で這い上がってくるだろうが、自分が渋ったせいで彼女は丸腰だ。
「---っ!!おい、刹那!!」
銀時はもう一度叫んだ。
「いったたた…」
ようやく音が鳴りやんだ時、刹那は突然体に受けた衝撃で、気を失ったまさよしを抱きかかえたまま数メートル吹っ飛ばされていた。
何が起きたか分からなかったが、今見える目の前の瓦礫の山の光景からして、間一髪助かったようだ。
だが、今のはどうやって…。
「ぐっ…!!」
「そ、総悟っ?!」
状況を理解するのに時間がかかった。
が、どうやってあの場から逃げられたのか、隣で痛みを必死に堪えている沖田の姿を見れば明らかだった。
あれが頭上に落ちてくる寸前、彼が自分を押し飛ばし、守ってくれたのだ。
自身の体の傷はただのかすり傷だが、逃げ遅れた沖田の肩からは酷く出血しており、破られた服の先に見える肌の色も青く変わっている。間違いなく骨が折れているであろうその傷に加え、額からも真っ赤な血を流している痛々しい姿だった。
刹那はひとまずまさよしを隣に寝せ、沖田頬に手を触れた。
「総悟、しっかりして!総悟!」
「お、大げさでさァ姉御。俺は死んじゃいねぇやい。あんたと、ガキは無事ですかい」
「総悟のおかげで私はかすり傷で済んでるし、まさよしも気を失ってるだけで大したケガはないよ」
「よかった。こんだけ体はって重傷を追わせちまっちゃ、俺ァただの怪我損になるとこだった。」
「ゴメン…でも、どうして…」
「なんかよくわかんねぇけど、どんくさい姉御をさっき見ちまったんで、思わず体が勝手に動いちまった。」
「おい、どんくさいは余計だ。つか、うるせぇ」
こんな状況でも憎まれ口をたたく総悟に刹那は鋭い目で睨んでそういうと、総悟はははっと笑い声をあげた。
刹那は少しだけ安堵して胸を撫でおろした。
ひとまず死にかけではないらしい。
だがいくら憎まれ口が叩けても、治療が遅ければ命に関わってしまう。
彼の辛そうな呼吸と表情を見て、刹那は徐々に怒りがこみあげてきた。
その時。
再び強い風と地響きがするような音が聞こえてきた。
両腕で顔を覆い、それが収まった後そちらを見れば、木刀を持ったままこちらを見て驚いた顔をしている銀時と目が合った。
「銀時…!」
「刹那!無事だったか!!」
「総悟が、間一髪で助けてくれたんだ。」
「…総一郎君!」
「…総悟でさァ。旦那」
「ひでぇケガだな、おい」
「早いところ治療しないとまずい。…状況は?」
「あぁ、大方前菜は終わったみてぇだな。次はどうやらメインディッシュだぞ」
「…」
銀時の背後を見ると、人一人誰もいなかった場所から、いきなり姿を現す天人達が視界に入った。
「とっ…透明人間だっ…!!!!」
敵軍を見た瞬間、少し離れた位置にいる神楽や新八、銀時までもが思わず零す。
刹那は頭を抱えて思わず突っ込みを入れた。
「そもそも人間じゃねぇよ。つーか何あれ、やっぱりあそこに透明になって隠れてたってわけ」
「そうみてぇだな。やっぱり刹那の野性的本能は恐ろしいぜ。最初からあそこに何かいるって気づいてたんだろ」
「…気づいていても、手のうちようがないんじゃ意味ねぇよ」
情けない声で、静かにそう答えた。
砲弾の嵐は一先ず納まったが、周囲の景色は残酷なものだった。
この辺り一片の町が、死んだようなものだ。
あちらこちらの建物から火災が発生するわ、建物は崩れているものもあり、避難が間に合ったのか、逃げ遅れて瓦礫の下に埋もれてしまっているのか、人一人姿を見る事すらなかった。
「ヒャヒャ、だいぶ人数が減ったなぁ」
天人達は、この状況に喜びを覚える。
民間人の避難を率先して行っていた真選組の応援の者たちも、何人かその場で倒れている姿も見えた。
いよいよ刹那の心の中の何かが、プツンと音を立てて壊れたような気がした。
「…総悟。」
「…?」
自分の名を呼ばれて返事はしたが、とても刹那が呼んだものとは思えぬほどの、低い声だった。
「あいつら真選組狙ってるんだったよな。」
「…たぶん、昨夜俺たちの仲間をやったのは、あいつらでさァ。」
「そうか。仕返し…したいか?」
「え…」
刹那は総悟に視線を向け、そう質問を投げた。
一瞬どういう意図でそう聞いてくるのか分からなかった沖田は、ぐっと拳を握りしめて歯を食いしばり、答えた。
「してぇ…あいつら、ぶっ殺してやりてぇ」
それでも、自分のいう事を利かなくなってしまったこの右腕で、この体で。どうやってあいつらに立ち向かえるというのだろう。
この傷は、自分の意思で刹那を守りたいと決めて負った傷だ。
刹那のせいでもない。
しいて言うなら、あんな瓦礫を消し去る程の力がなかった自分に腹が立つ。
俺は何もできないのか。
敵を目の前にして、身体を動かすことすらできねぇのかい。
そう心の中で叫ぶと、気づけば自分の視界にふっと刹那の髪が入りこんだ。
俯いた視線から彼女の方に変えると、青色の綺麗な瞳には、自分の姿が映り込んでいた。
「…総悟。私は、私のせいでこんなケガを負わせてごめん、とは言えない。言ったところで、あんたのケガが治るわけでもないし、何かが改善されるわけでもないから。」
「姉御のせいだなんて、思っちゃいねぇさ。これは俺が自らの意思で動いて招いた結果でぃ」
「でも、ありがとう。おかげて私は今自由に動ける。だからせめて今だけ、動きたくても動けない総悟の意思を、私がもらう。」
「…え」
刹那はそう言って、総悟の腰に差してある刀を取り外し、自分の手に取った。
「お、おい姉御?何を…」
「総悟の魂、連れてくな。今から仕返ししに行ってくるわ。…総悟も一緒に闘えるように。」
凛とした澄んだ声でそう言った刹那の言葉は、沖田の胸に強くささり、有無を言わせなかった。
彼女は立ち上がり、敵軍のほうを向いてはもう一度振り返り、フッと息を吐くように笑った。
ーーあとは任せろ。
そう言ってくれたような気がした。
刹那はそのままゆっくりと歩き始め、敵軍の方へと近づき始めた。
「やべ、今の鳥肌たった。…姉御には敵わねぇや」
沖田は彼女の背中を見て、聞こえぬ程の小さな声でそう呟き、笑った。