1.序奏
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※下の名前は男女共用できる名前を付けるとストーリーがしっくりきます💦
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沖田に連れられるまま、刹那は町外れにある一通りも全くない空き地へ辿り着いた。
「ちょ、ちょっと待ってホントに手合わせすんの?!」
「今更ここまで来て冗談とか言っても面白くないと思いますぜぃ。えーっと、確かこの辺に……っと、あった。」
空き地の奥の方へ行き、何かを探していたかと思えば、彼が手にしていたのは木刀だった。
「いやなんでそんな都合よくそこに木刀あるわけ」
「この空き地で、ガキ共がたまにチャンバラごっこしてるの見る時があるんスよ。家に持ち帰ると母親に怒られるってんで、ここに隠して帰るらしいですぜぃ。」
沖田の言う子供に、なるほど賢い。と呑気に感心していると、いつの間にか木刀が真っ直ぐに刹那の元へ飛んできていた。
「ーーっ!」
そのせいで、刹那は嫌でも気持ちを切り替えることになる。
素早く横へ交し、しっかりとそれを掴む。
だが、沖田はのんびりと待ってはいなかった。
かなり早いスピードで刹那との距離を縮め、両手で刀を振りかざした。
沖田はにやり、と口角を上あげた。
だが刹那の不意をつき、更には両手で剣を振ったというにも関わらず、目の前の女は左手一本でそれを受け止める。
剣を手にした腕で顔は見えないが、暫くせめぎ合いが続いた。
しかし先に動きを見せたのは刹那だった。
受け止めている木刀を徐々に下へ下へとずらし、ようやく彼女の視界が広がった時、沖田はその姿を見て硬直した。
「…やれやれ、どうやら真選組の連中は血の気が多いらしいな」
その声を耳にした瞬間、沖田は背筋に寒気が走った気がした。
つい先程までの優しい声色とはうって変わり、酷く威圧感のある低い声だ。
人間の野性的本能が働いている。こいつはヤバい、と。
どことなく殺気を放たれた鋭い目とその声に、沖田はすぐさま後方へと飛び、再び間合いを取った。
「オイオイ、なんつー変わりっぷりだよ…」
気づけば手に汗を握り、額からも一滴の汗が流れた。
さすが旦那の相棒をやっていただけのことはある。
沖田は大きく音を立てて息を飲み、再び地を蹴り走り出した。
「姉御ォ、あんたやっぱすげぇな!」
先程までの他愛ないやり取りであたふためいてた人物とはまるで別人。
刀を手にしただけで侍となり、手合わせと言っても戦場に立っているようなオーラを纏っているその姿に、沖田は身震いするほどの好奇心を抱いた。
「いきますぜぃ!!」
一手目の攻撃よりもさらに勢いをつけるために更に加速した。
「うらあああああっっっ!」
軽い手合わせをする程度だと決めていたのに、侍と化した彼女を見ていつの間にか手加減を忘れていた。
その素早い振りを、冷静な眼差しで刹那は見ては、腰を低くして柄をぎゅっと強く握りしめて、構えをとった。
それが沖田の好奇心を増すことになる。
この攻撃を受け交わすのか、それとも先に自分が刹那の居合切りを受けてしまう事になるのか。
こんな状況で、心が弾む。
自然と笑みが浮かびつつ、とうとう至近距離まで詰めた時。
カァン。と鈍い音を鳴らして沖田の刀は止められた。
そして刹那と沖田は、自分たちの間に割って入ってきた人物の姿を見て、酷く驚いたのだ。
「…おいこのクソサディスト!何考えてんだテメェッ!!」
沖田の攻撃を片手で握る木刀で受け止めた衝撃で、銀色の髪がなびく。
刹那の視界に入るのは、彼の背中のみ。
それでも、この状況に酷く苛立ちを覚えているのを声色で理解した。
「銀時…」
「旦那…!?」
銀時は怒りに任せ、未だせめぎ合いをしている沖田の剣を強くはじき返した。
「おいこらぁ一体どういう状況だ。真選組はけが人相手に本気で仕掛けて何やってんだ、あぁ?!」
「あ、いやこれは…」
「…すいやせん。一発目の攻撃をかわされた時に、姉御がどこまで強いのか無性に見たくなっちまって…二回目の攻撃はいつの間にかマジでした。」
銀時の険しい顔に、沖田は苦笑いを浮かべてそう返し、木刀をしまった。
これ以上仕掛けてくる気配のない沖田を見て、銀時はくるりと踵を返して刹那に怒鳴りつけた。
「テメェもテメェだ!何勝手に相手してんだ!今テメェの体がどういう状況なのか分かってんのか!」
「…」
その言葉に、刹那は何も返せなかった。
それどころか、申し訳ないという気持ちを感じていない様子だ。
手に取るようにそれが伝わってきた銀時は、ふつふつとこみあげてくる怒りを更に刹那にぶつけようとした。
が、それを沖田が遮った。
「旦那ァ。俺ぁあんた程その人との付き合いは長くねぇからそこまででしゃばった事を言うつもりはねぇですが…。姉御は察しがいいし、頭もキレそうでさァ。でも、今まで何もかも背負ってきて一人で闘ってきた人でさァ。思ってる事は直接言わねぇと、分からねぇ事もありますぜぃ」
「---っ!」
その一言に、銀時は返す言葉が見つからなかった。
沖田は制服についた塵埃を軽く払い、最初に脱いだ上着を肩に担いで空き地から去るべく足を動かし始めた。
「…総悟っ!」
この場に銀時が現れた事に未だ驚いていた刹那は、彼の去っていく姿を見て、ハッと我に返り名を呼んだ。
沖田はピタリと止まって顔だけ彼女の方へくるりと振り返る。
「…姉御。またやりましょうや。俺ァあんたに俄然興味わきました」
そう言ってニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、沖田はその場に二人残して去っていった。