1.序奏
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※下の名前は男女共用できる名前を付けるとストーリーがしっくりきます💦
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深紅の血が、スローモーションで目の前に散り、自分の纏っている衣類にべったりと染み付いた。
状況を理解するのに、かなり時間がかかった。
おいおい、何してる。
何やってんだ、刹那。
どうして……どうしてそんなところにお前の刀が……
「刹那ーーーー!!!」
本来であれば自分に向けられるはずの水無月は、いつの間にか彼女の胸を貫いていた。
つい先程、あのころと同じように優しく微笑む刹那の顔を見たと思ったのに。
どうしてーーー
膝立ちする気力もなく、ゆらりとゆっくりと倒れていく刹那の身体を、銀時はハッとして急いで抱きとめた。
「おい、しっかりしろ!!おい!!」
横抱きにしても、彼女の背中からどくどくと血が溢れ出る。
みるみる体温は落ちていき、掴んだ手のひらはまるで氷のように冷たい。
「ぎん…ごめん……」
「馬鹿野郎が!なんで今俺を斬らなかった!!俺はテメェに斬られる覚悟くらい持ち合わせてんのに!…つか、何で謝ってんだよ、意味わかんねーだろーが!!」
銀時が怒鳴るように叫ぶ声から、微かだが震えているのが伝わってくる。
その光景を苦しげに新八たちは見守る。
一体彼女はなぜ、自分を刺すようなマネをしたのか。
そこにいる誰もが、彼女の考えを理解できなかった。
「……二度も、目の前で私が死ぬとこを見させてしまうなんて……残酷な戦友だよね。」
刹那が声を出すと、喉からヒューッという異音が聞こえてくる。彼女の容態が酷いと物語っている。
だが時折口元から零れてくる血にむせながらも、優しく微笑んだ。
「何しょーもねぇこと気にしてんだ!今てめぇ正気に戻ったじゃねぇかっ!こんなことしなくても何とかなっただろ!!」
「そうかもしれない……でも、もうやなんだ。」
「……」
「私が動ける限り、奴らはあらゆる手を使って私をコントロールしてくるはずだから…もしそうなった時、銀時を本当に斬ってしまったら、本当に壊れちまうや。」
「刹那……」
「大切な人まで、傷つけて生きたくない。私は、あなたの背中を守り続けたくて強くなったのに、こんな闘いはもうやだよ、銀。」
「俺の背中……」
「本当はもっと早くこうすれば良かったんだけど、さ。銀が、あの時……俺を守れなかった事を悔やんでると思ったんだ。だから、どうしても死ぬ前に銀に伝えたくて……」
「死ぬとか、言うな……!刹那はもう死なせねぇ!!」
「……悔やむなよ。あの時のことを。銀には…感謝の気持ちしか抱いてないんだ。」
意識が朦朧としているのか、銀時と接しているせいか彼女の口調が昔の頃のように戻っていく。
「勝手な事言って悪ぃ。…でも、どうせ死ぬなら、今度はお前の傍で……笑って死にたいんだ」
銀時の手を握り返す刹那の力がふっと抜ける。
宣言通り、彼女は笑顔を浮かべたまま、意識を手放した。
「お、おい刹那……」
酷く震えた声で、銀時は名前を呼ぶ。
「おい、胸糞わりぃ冗談やめろやコラ」
その言葉に、返ってくる声はない。
「ーーっっ!馬鹿野郎が!!勝手に死のうとしてんじゃねぇ!俺ァテメェが死んでもいいなんて一切許可してねぇんだぞっ!!」
地面に全力で拳を打ち込む。
そんな彼の背中を見て、新八たちは酷く胸を痛めた。
「くそっ!!なんてことだ!!レイを早く取り戻して治療室に入れねばっ!!今ならまだ間に合う!あの女を治してさっさと使えるようにしろっ!!」
ようやく天人達も状況を理解したのか、エドが部下たちにそう怒鳴りあげた。
「……使えるようにしろ、だと…?」
その一言に、ぴくりと耳を立てた銀時は、そっと地面に刹那を置いて立ち上がった。
「刹那はテメェのもんじゃねぇんだよォォォォ!!!!」
「ぐっ……!!」
突然向けられた銀時の凄まじい殺気に、天人達は恐怖心を抱き後退りをした。
そんなことはお構い無しに、瞬く間の速さに、奴らとの距離を詰めて銀時は暴れ始めた。
「僕らももう参戦してもいいよね、神楽ちゃん。」
「……当たり前アル!!銀ちゃんの大切な仲間をあんなにして、銀ちゃんをあんなに傷つけて、私もう絶対アイツらぶっ潰すネ!!!」
そこにいた新八と神楽も、銀時に続けて走り出した。
「お、おいっっ!」
土方は二人を止めようとしたが間に合わず、小さな二つの背中を見守ることしか出来なかった。
「……土方さんよぉ。」
「なんだ、沖田」
「ちと面倒なこと思いついたんですけど、実行していいですかぃ。」
「……なんだ」
「今ならまだなんとかなるかもしれねぇ。そこのお姉さんを、屯所に在中してる医者を呼んで治療してもらうんでさァ。」
「……奇遇だな。今俺もちょうど鬼電してやろうと思ってたとこだぜ」
ニヤリ、と土方は口角を上げて、すぐさま屯所へと連絡をとった。
多方事情を知ってしまった以上、彼女の強い生き様を見てしまった以上、いてもたってもいられなくなってしまったのだ。
けれどもあそこに参戦していいほど、彼らに関わっている訳でもない。
それならせめて、彼女が病院を恐れている理由を知り、多方真選組の連中を、自分を追ってくる天人達から守ろうとしてくれたその敬意を示すべきだ。
「くそったれ、くたばんじゃねぇぞオイッッ!!」
土方はそう怒鳴るように、既に意識もない刹那に吐き捨てたのだった。