1.序奏
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※下の名前は男女共用できる名前を付けるとストーリーがしっくりきます💦
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その数日後だ。真夜中厠へ向かうために、眠気眼を擦りながら廊下を歩いていた時。奴の部屋から、うめき声が聞こえてきた。
「おい、刹那…?大丈夫か?刹那!!」
異常な苦しみの声を聞くのが堪えられず、勢いよく襖を上げると、眠ったまま苦しみ悶えている刹那の姿があった。
「刹那!しっかりしろ!おい!」
傍により、夢に魘されている仲間を起こそうと駆け寄ると、そこには酷く衝撃を受ける光景を目にしたのだ。
苦し紛れに体が動いたせいか服が乱れ、はっきりではないが露になっているその体は、紛れもなく女の体だった。
険しい表情を浮かべている彼…いや、彼女をよそに、頭の中がぐるぐると混乱する。
「い、いやだ…嫌だ…苦しい、殺さないで…お願い、殺さないで…!」
まだ悪夢から解放されない彼女は、いつもの様子とは想像できない程弱々しい声でそう言った。
その声を聞いてハッと我に返る。こいつが今女とか男とかどうでもいい。何かに怯えて、何かに苦しんでいるんだ。
「おい刹那!しっかりしろ!お前は生きてる!お前を殺そうとしてる奴はもうどこにもいねぇ!」
刹那の手をぎゅっと握りしめると、その時改めて指、腕の細さを実感した。通りでこんなに細い腕をしているわけだ。
こいつはずっと女であることを隠し続けて俺たちと同じように剣を振るい、強くなった。どうしてわざわざ素性を隠して剣を振るう。一体何がそんなに彼女を追い詰めた。
考えれば考える程、自分の無力さに苛立ちを覚えた。いつも隣にいるのに、こいつの力になってやることはできないのか。俺はこいつからいろんな事を教えてもらって、いつも助けてもらっているのに、助けてやることはできないのか。
そう思うと、自然と手に指に力がこもる。彼女の頬に涙が伝う。今こいつにできる事があるとすれば名前を呼び掛けてやることくらいだ。
「おい、しっかりしろ!俺がついてるから!もうお前は一人じゃない!」
「あ…銀時…?」
「目ぇ覚めたかよ!しっかりしろよ!すんげぇ魘されてたぞ」
「ごめん、昔の夢を見て…でも、銀時がいるならもう大丈夫だな」
涙ぐみながら、無理に微笑む彼女を見て、無性に胸が痛んだ。そのまま自分の胸の中に彼女の顔を押し込み、強く握りしめた。
「バカ野郎…!ったりめーだろ!何があったか知らねぇが、これからは俺が守ってやっから、んなしょーもない事に心痛めてんじゃねぇ!」
「…銀時は、優しいな」
そう弱々しく零した彼女は、微笑んだまままた眠りについた。
「…刹那」
ようやく落ち着いた呼吸に戻ってきた刹那は、すやすやと寝息を立てて眠りについていた。
「…ったく。どうしちまったんだよ全く」
らしくない自分の動揺っぷりと突然衝撃の事実を突き付けられたことについてゆけず、頭をかきむしった。
隣では、自分の手を握りしめたまますやすやと眠っている刹那の姿がある。
「あーもうっ!せめて女なら乱れた着物くらい直して寝ろっつーの。まったく世話の焼ける奴だな」
フッと笑みが自然と零れた。そして妙な事に、刹那が女だったということにも安心感を覚えた。
「しゃぁねぇな。守ってやるよ、俺が。おめぇの背中をな。…って、やべぇまじでしょんべん漏れるっ!!!」
俺は刹那が女と知ってしまった事を口に出すことはしなかった。あいつなりの生き方がある。あいつなりに背負ってるもんがある。それをいつかあいつの口から聞けるまでは、黙って見守るって決めたんだ。
そう心に誓った数時間後の事だった。突然訪れた戦の中、あいつが真正面からの攻撃を受けて、一本の刃が体を貫き、深紅の血を吹き上げた光景を目の当たりにしたのは。
そして怒りに任せてその戦の勝利を得た後、彼女の姿を見る事すらなかったーーーーー