四.戦姫編
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襖の扉を開けると、早くも彼女は自分の姿を見るなりポカン、と口を開けたまま硬直した。
「よう、俺が最後の客だ。しっかり接待してくれよ、刹那。」
「……」
下唇を尖らせて、じとりと冷たい視線を送ってくる。
それでも銀時は、刹那の隣に堂々と腰を下ろし、猪口を手に取った。
「全く、総悟といい、銀時と言い物好きが多いな。わざわざ吉原に来なくても、別に酌ぐらいするのに。」
「いや、この部屋でお前のその姿に酌されるのも案外悪くねぇのさ。もう今日でそれも終わりだしな。」
「そう、ね……。」
闘いにようやく幕を終えた刹那は、時折どこか切なそうな表情を浮かべる。
銀時はそれを見て、人差し指で頬を掻き、勢いよく猪口をテーブルの上に置いたかと思えば、刹那の身体を畳の上に押し倒した。
「ちょっ、銀時……?!」
「遊女ってもんは本来こーいう接待だろ。」
「……」
「刹那。俺は今回お前がとった手段の事、結果はよかったにしろ未だに許しちゃいねぇんだ。もう今後一切、自分を犠牲にして身を投げ出すような事はするなよ。」
銀時の赤い瞳が、まっすぐに刹那へと向く。
彼女は言葉を詰まらせながらも、抵抗しようとしていた力を抜き、彼に小さく笑ってこう返した。
「もうしない。あれだけの人達が、私を見て悲しんでくれた。銀時だって、泣いてくれた。もうあんな顔みたくないからね。」
「おまっ……それ言うなよ!!っつーか泣いてねぇ、あれはほら、ホコリが目に入ってよ……!」
あたふたと言い訳する銀時を見て、刹那は更ににやりとと意味を浮かべた。
「見苦しい言い逃れだな。私はしっかり見たよ、銀時の泣きヅラ。」
「てっ、テメェ……!」
「ありがとう。銀時。」
「ーーッ」
「私のために泣いてくれて。必死になって助けようとしてくれて。銀時が一番、必死だったように私には見えた。」
「そりゃ、オメェ……」
「だからね、銀時。私の残りの人生、全部銀時にあげる。」
「え……」
「こんな性分だから、いつ危ないことに首突っ込んで命落とすかわかんないから、下手に未来の約束は出来ないけれど……でも生きてる限り、銀時の傍にいる。銀時の一番近くにいる。だから、もうあんな悲しい涙を流さないで。」
そっと銀時の頬に手を触れる。
彼の体温が手のひらから伝わり、自然と笑みがこぼれる。
彼女が自分の目の前で横になっているのを見て、そんな愛おしそうな目を見てしまった銀時は、無意識に彼女の口に自分の口を押し当てていた。
「ふっ……」
微かな隙間から愛らしい声が零れる。
銀時の理性を更に掻き乱すかのようなその一声で、勢いは増し、彼女の口の中に舌を這わせた。
「あっ、ちょっ…まっ…」
「待てねぇ。そんな殺し文句言われて待てる男はいねぇ。」
「ぎっ……!」
次第に力強くなる銀時の力に比べ、刹那の力は徐々に抜けていく。
今まで口付けをされたヤツらの中でも誰よりも強引で、誰よりも優しいものだった。
銀時から逃げられない刹那は、数分間それを繰り返されたことにより、息は上がり頬を赤らめ意識がぼんやりとし始めた。
「ね、ねぇ、銀…」
「なんだよ。もう待てねぇっつったろ。今からテメェが今まで体感した嫌な思い出は全部上書きしてやっから、覚悟しろよテメェ。」
死んだ魚の目をしているはずの彼の瞳は、ギラギラと輝いて彼女だけを見ていた。
刹那は思わず銀時のそんな表情を見て、フッと息を吐き微笑んだ。
「どうしよう、銀時。」
「あ?なにがだよ。」
「今不覚にも、どうしようもなく銀時がかっこよく見えちゃった……」
「あぁ?今更気付いた?銀さんは元々カッコイーんだっつーの。」
「ふふ、そうだね。そうだった。」
「なんだよその適当なあしらいは。テメェもう覚悟しろよ。優しくなんてしねぇからなッ!」
「……知りたい。」
「?」
「銀時が、どうやって私を抱きしめるのか。どんな感情を抱いているのか。だから見せて。私に……」
そっと両手を伸ばし、刹那の手が頬に触れる。
威嚇しているはずなのに、彼女の方が煽るのが1枚上手だ。
「~~ッ!煽ってんじゃねぇよ!」
銀時のヤケになったのを見て、刹那は再び優しく微笑む。
そうして彼女が遊女である最後の時間を、銀時はしっかりと堪能し、彼女の全てを包み込んだ。
そしてまた、彼女も初めて銀時の心と体全てを受け入れた。
あの雨の日に、あの小さな姿を見つけた奇跡の出会いから。いろいろな出来事が立ちはだかった。それでもあの小さな、華奢な手を放すことを諦めなくて今がある。
たった一年もしない間に、刹那の周りにはたくさんの人が集まるようになった。
そして昔から彼女を見守っていた連中もまた、こうして自分のように一人の女を大切に思い、それぞれの道を行く。
誰もが刹那の幸せを願っている。
そうしてまた俺はまた、万事屋として、背中を預けられる相棒として刹那と傍にいる日が、再び始まるのだった。