四.戦姫編
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吉原の町もすっかり復旧し、あの事件から約一か月が経っていた頃。
相も変わらず昼間から賑わっている吉原の大通りを万事屋一行は歩んでいた。
いつものように、日輪がいる店へと足を運べば、ベンチには先客が腰を下ろして団子に手をかけていた。
「て、てめぇなんでまたこんなところに…」
「あ、旦那ァ。どうしたんですか。」
今日は非番なのか、黒い制服ではなく着物を着た沖田の姿がそこにあるのを見て、銀時たちは目を光らせた。
「お前、また刹那姉ちゃんにちょっかいかけに来たアルか?!」
「ちょっかいじゃねぇやい。嫁を手助けするのが夫の仕事でぃ。」
「おいおい待て、いつてめぇの嫁になったんだよ!紛らわしいこと抜かしてんじゃねーよ。本気にするやつがいたらどーすんだよ!」
「それはそれで好都合でさァ。」
「あらあら、銀さんたちもいらっしゃい。」
入口で口論している彼らに気づき、店から日輪が顔を出す。
「てめぇもなんでこんな税金泥棒丁重に扱ってんだッ!」
「やだねぇ、沖田さんは非番の日にしかここには来ないよぉ。全く、本当に刹那さんを大事に思ってるんだねえ。」
「…」
日輪の言葉に、沖田は返さなかった。
銀時がその含みのある日輪の言葉に首を傾げると、沖田はそのまま腰を上げ店を去っていった。
「刹那がなぜ銀時の反対を押しきって吉原で遊女を続けているか知っているか。」
突然、月詠の声が耳に入る。振り返ると、いつものように店の入り口で煙管をふかし、壁に背中を預けて彼らのほうを見ていた。
「ツッキー!」
「付き合いの長いお主なら、何も言わずとも刹那の考えていることがわかっているもんだと思っていたんじゃがな。」
月詠の一言に、銀時はめんどくさそうに頭を掻いては椅子に腰を下ろす。
その様子を見て、月詠も日輪もクスリと小さく微笑んだ。
「あんたのせいじゃないって言っても、きかなくてねぇ。刹那さんは、自分のせいで吉原をこんなにしたからって、元の吉原に戻るまでここを助けるために遊女をやってくれてる。義理堅い人だねぇ、まったく。」
「…んなこと言われなくてもわぁってるよ。」
「それでもあやつを女とみているお主からすれば、黙って見送るわけにはいかぬというわけか。」
「…それもちげぇ。」
「…?」
銀時の小さな否定に、二人は首を傾げる。
「俺が反対してんのは、吉原を助けるために働くことじゃねぇ。あいつはな…」
「刹那さんがどうかしたんですか?」
銀時は言葉を詰まらせる。そんな様子に、新八たちも加わり顔を覗き込むようにして彼を見た。
「あいつの剣を抜いた時と通常時のギャップがますます激しくなっちまったらやべぇ奴になるかもと思って…ふべっ!!」
魂を込めた叫びを最後まで聞き終えることなく、月詠の拳が銀時に命中する。
「何をわけわからんことを言っておるんじゃお主は。好きな女がやりたいことをやろうとしておるのも、黙って見守ることもできんのか。」
「…簡単に言ってくれるねぇ。言っとくがな、あいつをここで働かせるのを止めたがってたのは俺だけじゃねぇからな。」
銀時はそう言って、一か月前にこの場を去る時に奴らにしつこく念押しされた光景を思い出した。
ーーーー
「いいかてめぇ、刹那のそばにいるなら、これ以上余計な事させんじゃねーぞ。遊女なんてもってのほかだ!俺ァあいつが働いてるのを見た瞬間、いろんな意味で三途の川わたりそうになっちまったじゃねーか!」
「そうだぞ銀時、刹那は今まで苦しんだ分幸せに生きねばならない。それがもし吉原に償いしたいといって遊女をやるなんて言い出したら、あ奴は遊女としての楽しみを覚えて俺たちなんぞ目もくれなくなるやもしれん!」
「いやぁヅラ。そんな事はないぜよ。刹那に限ってそんな薄情なことはせん。じゃが、遊女になって刹那にもしものことがあれば、うちの副官がわしを殺さねかねん。しっかり頼むぞ銀時。」
闘いも終わり、手当も一通り済んだ頃、銀時はかつての昔の仲間に囲まれて責められていた。刹那を亡くしたと思うようになってから、各々の心の中で大切に扱われていた
のがあふれんばかりに伝わってくる。
もはやここまでくればただの過保護だ。
銀時は高杉達が言う言葉を、呆れながらにも聞いていたが、流石に苛立ちを覚えてそれに返した。
「…って!!てめぇら、俺にめんどくせー役押し付けてんじゃねーよ!止めたきゃテメェでとめやがれ!」
「馬鹿を言うな!刹那がおまんと一緒に万事屋をやる道を選んだんじゃ!おまんがしっかり管理せい!」
「そうだぞ銀時。もしてめぇの監督不届きであいつの身に何かあったら…この世界を壊す前にてめぇを壊す、っつーか殺す。」
「そういうわけだ、しっかり頼んだぞ。お前が管理を怠れば…」
そう桂が言うと、奴らはにやりと薄気味悪い笑みを浮かべて銀時にこう放った。
ーーー天誅を下す。
ーーーーーーーー
その時の奴らの威圧感は尋常ではなかった。
刹那もいい歳だ。自分のやりたいことは自分でやるべきだと思う。
それでもこれだけ仲間達に大切に思われ、大切にする刹那は、昔も今も変わらない。
「…そろそろか。」
そして遊女の仕事は今日で最後。
銀時はその最後の客として、彼女を指名していた。
「んじゃ、いってくらァ」
「しっかり連れ戻してきてくださいよ、銀さん!」
「お団子食べて待ってるアル!刹那姉ちゃんの分も!」
「いやそこは食べずにまっててあげようよ、神楽ちゃん。」
銀時が背中を向けて歩みだしても、新八と神楽はその場で刹那の帰りを待つ。
そんな不思議な光景に、銀時はふっと静かに笑みを浮かべた。
あいつは今、幸せだろうか。
あいつが望んでいた未来は、こんなものだったんだろうか。
時々それを、疑問にすら思う。
彼女が何を求めていて、何を喜びと感じるのかさえも。
考えたところで、本人にしかわかるはずもない。
それでも、あれから彼女が周囲の人たちに向ける笑顔は、本物だということだけは知っていた。
「さて、どーいう顔すんのかね、今度は。」
今日で終わる遊女の客も、残るは銀時ひとり。
内密でお願いしていたため、彼女は自分が来ることをまだ知らない。
銀時は心を弾ませながら、周囲の人たちに大切にされている一人の女の元へと向かったのだった。