1.序奏
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※下の名前は男女共用できる名前を付けるとストーリーがしっくりきます💦
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何かに捕まりながらでないと歩けない程の、頭痛が襲ってくる。
先日の戦で傷を負い、治療室に閉じ込められていたのをいいことに、上手く脱出できたというところまでは良かった。
だがこの江戸を駆け回れるほどの体力はまだ回復しておらず、体があちこち軋んで思うように動けないのは誤算だった。
かぶき町から出る事もままならず、とうとう昨夜気を抜いて路地で倒れてしまった。
もうだめかと諦めていたが、たまたま真選組に拾われたから助かった。あれが天人であれば自分の自由になる可能性はゼロになっていた事だろう。
偶然とは言え、真選組の見回りをしていた若い男二人に見つかり、病院へ連れていくという善意を真っ向から嫌だとつっぱねた自分に、屯所で手当てしてもらえた事は本当にありがたかった。
だがここに長居してしまえば、彼らとて自分を取り戻しに来る奴らに殺されかねない。目を覚ました後、すぐ様その場を絶った。
もし自由になれる事があったら、彼らにはいつか恩を返したい。
刹那にとっては、それが何よりも未来を生きる希望になっていた。
でも…。
「だめだ、足が動かない…」
そう弱音を吐き、その場に倒れ込むように腰を下ろす。空を見上げると、真夏日特有の夕立が押し寄せてくるような、真っ黒な雲が青空を包み込んでいた。
「無謀だったかな、やっぱり」
自分がした事に、今更ながら少し後悔を覚えた。エドという男を筆頭に集結している天人達に瀕死の自分が囚われてから、もう何年時が経ったのだろう。
奴らは死にかけの私を治療し、何度も何度も戦に狩りだした。傷を負い、死にかけ、そうしてまた、治療を受けて生き永らえる。
いっそのこと、殺してもらいたいと何度願ったことか。 それだけじゃない。
腕についているこのブレスレッドのような装置で、自分の記憶が徐々に薄れていく事。感情すらコントロールされていき、時折無意識に闘い、人を殺し、神経を支配されている感覚が手に取るように分かる。
これを 脱出して何とか外そうと試みたが、弱った自分の力ではびくともしなかった。
もう自分の過去の事はほとんど思い出せない状況まで脳を支配されているが、どうしても消える事のない記憶が一つだけ、ある。
どこで知り合って、どういう仲だったかまで詳しくは思い出せない。それでも、自分にっとて大切な存在で、温かい気持ちにさせてくれる彼らの顔をどうしても忘れる事ができなかった。
目を閉じれば、銀髪の少年が意地の悪そうに笑っている。そしてその横で、呆れて小さく息を吐く長髪の優しい顔付きの少年がいる。
ぶっきらぼうだが、いつも隣にいてくれる、目つきの悪い少年がいる。普段は馬鹿そうにしているが、いざとなれば頼りになる少年がいる。 た彼らと平穏な毎日を過ごすのが、ただただ幸せだと感じていた。もう名前すら思い出せない。あの時の彼らの笑顔だけしか、自分自身の記憶はない。それでもただ、それにすがるしか自我を保てないのだ。
あぁ、もしもう一度願いが叶うなら、彼らに会いたい。会って、心から笑いたい。
「はは、弱くなったなぁ私も…」
手で顔を覆う。空からはいつの間にか、ぽつぽつと雨が降り始めていた。このままいっそ、ここで死ねたらどれだけいいのだろう。そう考えていると、一人の足音が徐々に近づいてくるのに耳がぴくりと反応した。
まずい、追手かもしれない。真選組の連中が突然姿をくらまして不振がって追いかけてきたのだろうか。それとも自分から自由を奪っていく、あの天人の連中だろうか。
どちらにしろ、捕まるわけにはいかない。ふらつく足を壁にしがみついて何とか立ち上がり、その場から去ろうとした。
だが近づいてくる足音は、意外にも早く大きくなってくる。
駄目だ、間に合わない…!!焦りと恐怖を感じ、ここまでかと諦めかけたその時。
路地から突如現れたのは、銀髪の髪をして着物を纏った男の姿だった。
「えっ…!!」
雨が激しくなり、視界が悪くなる中だが、なぜだか彼の顔だけははっきりと見えた。
どうしてだろう。頭の中に浮かんでいた銀髪の少年と重なるのは。その時刹那は、一瞬ではあるが時が止まったような気がしたのだった。