四.戦姫編
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あの頃に見た、相も変わらず眩しいくらいの白い服を纏ったイザベルの姿が刹那の前に現れた。
もうすぐ死ぬということを予期している象徴だろうか。
そんな呑気なことを考えながらも、刹那はなんとかその重たい瞼を必死にこじ開けた。
「…イザベル、本当に?」
「お前とうり二つの顔がそうどこにでもあると思うか?正真正銘、お前の体の中で生き続けたもう一人のお前…イザベルじゃ。」
あの時と同じように、気高い物言いに言葉を失う。
銀時たちにも彼女の姿は見えており、彼らも同じように口を大きくあけて言葉を失っていた。
「え…待て、あれって…刹那の魂ってことか?!」
「たわけ!刹那はまだここで生きて目をあけておろうが!貴様縁起でもないことを言うなッ!」
銀時のボケに、桂が思わず突っ込みを入れる。
高杉は理解できないままも、半透明の状態で姿を見せている刹那とうり二つの存在を見ては呟くような小さな声で放った。
「おいおい、どういう事だ。刹那と本当に似てやがる。まさか、本当にドッペルゲンガーってやつが…」
「いや違いますから高杉さんッ!ドッペルゲンガーだとしてもそれは人間の世界で同じ顔の奴が3人いるっていう説ですから!天人関係ないですから!」
今度はそれに、新八が突っ込む。
黙ってそのやりとりを聞いていた女は、フッと力を抜くように笑みを浮かべた。
「おぬしが言っていた友人というのは、こ奴らのことだったか。ようやく会えたのだな。」
「…イザベル、もしかして…」
「そなたのことは、ずっと見ておった。…私が死んだあと、あのエドという男に血を全部抜かれてのぅ。そのままお主の体の中に入れられたわけじゃが…どうやらわれら一族の血はあまりにも強かったようじゃ。お主に飲み込まれてもなお、私の自我は保たれておった。」
イザベルは淡々と説明し、刹那はそれに黙って耳を傾ける。
彼女の姿勢を見て、他の者たちも同じようにイザベルに視線を集中した。
「あぁ。よう頑張った。あの日の約束忘れてはおらんかったようで安心したぞ。私はお前をずっと見ている。だから諦めなと言ったあの言葉…ようやく叶いそうじゃな。」
「な、なにを…」
「無石の効果は莫大じゃ。私を殺めた男…幻斎を一瞬にして塵にしたからのう。だが、お主はそうはさせん。」
「--ッ!」
「私だけが、お主の体から抜ける。それだけで対価は十分だろう。刹那。お主は十分戦った。十分苦しんだ。十分背負い続けた。もうここらで、その戦いは終いにしよう。こうして仲間達の元へ帰ってこれたんだ。ここから先は、もう一人のお主である私が引き受けよう。」
「イ、イザ……!」
「案ずるな。私はとうに肉体が滅びておる。だがお主はまだ生きられる。私の分まで長く生きるくらいの勢いで、必死に生き抜けよ。」
彼女の姿が、徐々に薄れていく。
刹那はなんとか手を伸ばし、彼女に触れようとする。
だがそれは届くことなく、そんな刹那を見て彼女は満面の笑みを浮かべた。
「お前には最高の仲間と友がいる。もう自由に、わがままに生きろよ。」
それがイザベルが残した、本当に最期の言葉だった。
刹那はいまだ彼女が立っていた場所をぼんやりと見つめては、うつむき小さく拳を握る。
結局私は、彼女に助けてもらうばかりだった。
あれから何度も実験を繰りえされ、自我を失いつつも何とか自力で死ぬ選択を取ろうとしたときも、自分の中で生き続けている彼女が止めていたのだろう、とようやく気付いた。
こんなに近くにいてくれたなんてーーー。
そう思うと、自然と涙がこぼれた。
ーーーありがとう、イザベル。
あなたのおかげで私はまた、友と一緒に…仲間と一緒に歩んでいける。
そして空へと消えていく白い光を見ては、静かに笑みを浮かべたのであった。
「…あれ、っつーことは何、刹那は消えずにすんだってことか?」
「よく事情は分からんが、さっきの刹那のドッペルゲンガー的存在の奴が刹那を残してくれたんだろう。」
「…」
「なーんだよ、数分前まで必死こいてこいつを呼んでた俺はなんだったんだよ。」
「まぁ何はともあれ、だ。こいつが生きてるんなら、今回はそれでいいだろ。」
「…」
「っつーかテメェ、いつまで余韻に浸ってんだよ。生きてんならさっさと起きろコノヤロー。銀さんそろそろ腕がしびれるんですけど。なんか消えないってわかったら、急に重たく感じるんですけど。」
「おい銀時。仮にもレディーに対して重いは失礼だろう、重いは。刹那とて、これだけ立派な女の体に育っているんだ。多少なりとも重みはあるだろう。」
「いや、こいつが重いのは女の体のつくりのせいじゃねぇ。無駄に背丈があるせいだろ。女のくせに俺と肩並べやがって。」
「おい高杉ィ。女のくせにって……それはおまん、言い過ぎじゃろーて。刹那だって好きでこんな体になったんじゃなかと。それに体型というんはもともとの遺伝子じゃろ。偽って男として通せるような色気のないからだ…」
「お…お前らいい加減にしろよッ!!!」
空気も読まずして、周りで恥ずかしい言い争いを始める彼らに苛立ち、思わず刹那は立ち上がる。
だが彼女が怒りに任せて立ち上がった瞬間、言葉を失わされるほどの温かい眼差しと、笑顔が視界に映り込んだ。
「…ばーか。なんつー顔してんだよ。」
「いつもみてぇに俺らにげんこつ一発ずつ食らわせて、説教たれるのがお前だろ?」
「そんでもって、喧嘩してもいつの間にか元通り話せるような空気にするんが、おまんじゃろ?」
「ようやく戻ってきてくれたな、刹那。ずっと待っていたぞ、本当のお前に会えるのを。」
その場にいる誰もが傷だらけで、痛みがあるはずなのに。
その戦場に立っていた皆が、自分を見て優しく微笑む。
イザベルがすべてを背負ってくれたおかげで、体の中に流れていた自分以外の違和感も何も感じない。
随分重く感じていた体が、なぜか驚くほど軽く感じる。
あぁ、これが化け物からも、長年耐え続けていた試練からも解放された、昔彼らとともに時間を過ごした、本当の自分ーーーー。
彼女がようやくそれを理解したとき、彼らは言った。
ーーーーーおかえり。
「--ッ、ただいまッ!!」
刹那の両腕で、銀時たちを包み込み力任せに抱き着いた。
痛いだの離れろだの、いろいろ罵声を浴びているものの、どことなく彼らも嬉しそうな声色が伝わってくる。
それを見ていた新八たちも、つられて笑みを浮かべていた。
「…いい顔で笑いやがる。」
「あぁ、こりゃまた格別な美人だな。」
「…嫁が旦那の前で堂々と浮気してらァ。ま、今回は大目に見てやるか。」
「そうしてください。だって、銀さんも桂さんも、坂本さんも高杉さんも。そして刹那さんも、あんなに喜んで笑っているところなんて、僕も初めて見たんですよ。」
「よかった、刹那姉ちゃん。」
彼女たちを遠目に見ながら、各々がそうつぶやく。
そしてそれを余所に刹那達がいつの間にか再び、本くだらない過去話の言い争いをし始めていることに気づいたのは、これから数秒後のこと。