四.戦姫編
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一斉攻撃により、深手を追う幻斎。
そして攻撃により自分の身体に負荷がかかった銀時たちは、その場に勢いよく倒れた。
刹那は何とか奴よりも早く立ち上がり、幻斎が再生する前に再び攻撃を仕掛けようと刀を取った。
足元がふらつく。視界が霞む。刀を持つ手が震える。
それでも刹那は、倒れるわけには行かなかった。
「死ねぇぇぇッッ!!」
月夜に照らされる水無月の刃が、幻斎を貫く。
だがその反動と共に内なる刹那のものではない血が、ざわつき始めた。
「ガバッ……!」
口から大量の血を零す。その場に崩れ落ち、刹那は刀を手放した。
「くっ……」
「やれやれ、どうやら天はまだ俺に味方をしてくれているらしい。」
「刹那ッッ!」
全身満身創痍状態の銀時達が彼女の名を呼ぶ。
「もうお前もそう永くはないようだな。身体が戦姫の血を抑える器ではないのだ。だが俺ならお前を長生きさせられるぞ。さぁ、この手を取れ。」
「ハッ……誰がとるかよクソ野郎。」
「……」
手を差し伸べるも、刹那はそれを払い除けた。
幻斎はつまらないという表情を浮かべ、地に這っている彼女を見下ろす。
「もう少し利口な女だと思ってたよ……刹那。」
「……勘違いも甚だしいな。〝俺〟は別にハナから賢くもなんでもねぇよ。テメェのやりたいようにやる。それを、コイツらが教えてくれたからな…」
刹那はそう言ってゆっくり立ち上がり、再び水無月を手に取った。
手も足も動かないだろうその状態に、誰もが目を疑うほどだ。
誰もが彼女に、もう辞めろと声を掛けてやりたいほどだった。
「……陸奥。」
近くで倒れている、陸奥の名を静かに呼ぶ。
陸奥はなんとか重たい頭を持ち上げて、彼女を見つめた。
「……っ、」
刹那のその表情を見て、思わず硬直する。
彼女がなぜ、自分にわざわざ商いの話を持ちかけてきたのか。
なぜ彼女が、この胸の中にある物を使おうとしているのか。
理由はここに来た時に、もう分かっている。
彼女の自分に向ける穏やかな笑みは、何も言葉を交わさずともその覚悟を決めたものだった。
止めることは出来ない。
止める資格などない。
陸奥は胸をぎゅっと握りしめ、下唇を噛み締めながらそれを刹那の方へと投げた。
「受け取れぇぇッッ!!」
足はもう動かない。
足どころか身体も動かせない。
それでも陸奥はなんとか力を振り絞り、刹那へと全力でそれを投げた。
「商談成立じゃぁッッ!!」
その言葉とともに、彼女の手に無石が届く。
しっかりとそれを受け取った時、刹那は静かに口角を上げ、再び剣を構えた。
「やれやれ、さすがの地球人ではお前にはもう歯が立たない。ここからは、異星の血が混じった俺とテメェのサシで勝負しようや。」
「お、お前何を言って……!」
「無茶だ刹那ッッ!」
「……銀時、晋助、小太郎、辰馬。新八、神楽。月詠、陸奥。それから真選組のみんな。」
刹那は仲間たちの名を呼んで、空を見上げる。
よく通るその声は、意識が朦朧としている連中らの意識をそちらに集中させるほど、凛としていた。
刹那の表情がよく見えない。
だが、夜空を見上げる彼女の口元は、間違いなく笑みを浮かべていた。
「ここまで、繋いでくれてありがとう。」
消えそうな、静かな声でそう告げる。
彼女が今、何をしようとしているのか。
どんな手段を利用して奴を倒そうとしているのか。
陸奥と月詠は知っていた。
知っていても何も自分にできないのが不甲斐ないと、自身を責めた。
手のひらから血が流れるほど拳を握りしめ、下唇から血が流れるほど歯を食いしばる。
「刹那ーーッッ!!」
そう二人が叫んだ時、刹那は既に走り出していた。
その刃を突き立て、全身の足先から頭のてっぺんまでもの力を振り絞り、再び足を動かす。
チャンスは一度きり。奴に深手を負わせて再生に時間をかけている間に動きを捉え、この陸奥が探してくれた石を体内に植え込む。
もしそれを逃せば、全員の命は助からない。
刹那は全ての命を水無月に託し、幻斎へと猛攻撃を仕掛けた。
「てゃぁーーーッッ!!」
何回かの責めが交わされ、自分に幻斎の刃が刺され、斬られる。
それでも刹那は攻撃を止めることなく、何度も何度も一箇所を狙い刀を振り続けた。
幻斎がその勢いに押され、数メートル先まで吹っ飛んで壁にぶち当たる。
刹那は息を肩でしながら、荒い呼吸と共に身体から流れ落ちる血液を見て、苦笑いを浮かべた。
ーーもうそこまでもたない。
そう理解していた。
刹那の立っている位置のすぐ近くには、銀時が横たわっていた。
「お、おい刹那、それ以上は……!」
「まだそんな口たたける余裕あったのか。銀時、頼みがあるんだ。」
「…なんだよ。」
「まだ右手、動くか?」
「……?あぁ、右手くらいなら。」
「一瞬の隙ができた時、奴にお前のありったけの力でその洞爺湖投げろ。」
「なっ……」
「頼んだぞ。お前にしかもう、頼めない。」
「何言って……」
「月詠。銀時の援護頼むな。」
「刹那ッッ、おぬし……」
「言ったろ。あんたにしか頼めないって。……任せたからなッ!!」
前髪から微かに見えた刹那の目。穏やかな柔らかい笑顔。
月詠にはハッキリ見えた。
彼女がこの戦の終結を銀時に……銀時を支える役割を自分に託したということを。
刹那は再び目の前に現れる幻斎へと立ち向かい、攻撃を防ぐ。
月詠はなんとか銀時の傍まで近づき、洞爺湖を彼に差し出した。
「お、おい月詠……?」
「頼む銀時。刹那の合図でこいつを投げろ。」
「お前、何言って……」
「刹那の覚悟を無駄にするなッッ!」
月詠の怒鳴り声に、その言葉に銀時はハッとする。
銀時はもう一度彼女の背中を見た。
幻斎へと立ち向かう刹那の背中は酷く小さくて、守りたくなるような細い身体だ。
それでも彼女は今、自らの意思で何かを背負おうとしている。
自分に出来ることがあるならば、やらねばならない。
銀時は腹を括り、剣を取った。
その時。
刹那が一瞬だけこちらを向いて、笑った気がした。