その光の傍らで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
はっきり言って真夏にコートを着るというのは自殺行為だ。
言葉にし難いほど暑い。
だけど、私の今の格好で表を歩くというのはどうにも恥ずかしすぎる。
もしかしたら行き交う人々は気にしないのかも知れないけれど、私が気にするのだ。
八月に入って、夜になっても気温は相変わらず高いままで。
太陽は出ていないのに息ができないほど蒸し暑かった。
「な……なんでこんなに暑いの……」
見上げれば輝くのは満月。
いつもなら涼やかに見えるはずの月が、今は灼熱の太陽のように見えた。
だけど、火神くんの家まではもう少し。
彼の家まで無事に辿り着くことができれば、きっと冷房が効いているから汗だってすぐに引っ込むはずだ。
もしも今普通の私服に身を包んで火神くんの家に向かっていたなら、満月と星空を楽しんでいたかも知れない。
でも今の現状では、私にそんな余裕はない。
通い慣れた道のはずなのに、今日は何だか全く別の景色の中を突き進んでいるように感じる。
私は満月を愛でられないことを少し残念に思いながらも足早に火神くんの住むマンションを目指した。