私の“はじめて”の
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
山姥切さんの言葉を遮る。
語気を強めた私に、山姥切さんはまた瞠目する。
彼の瞳を真っ直ぐに見据えて言ったけれど、またすぐに逸らされてしまった。
私が彼の布を羽織らせてもらっているせいでよく見えるようになった緑の瞳が不安げに揺らいでいる。
“写し”であるということは、彼からそんなにも自信喪失させてしまうことなのだろうか。
「すいません、私は刀剣のことは詳しくは知りません。それでも私があなたを選んだのは……目が合った時のあなたの瞳がとても綺麗だと思ったから……」
俗に言う、ひとめぼれ、なのだろうか。
彼に対して恋心を抱いているわけではないから、厳密には正しい表現ではないのかも知れない。
でも、他にふさわしい言葉が思いつかない。
「綺麗とか、言うな」
「あっ……すいません、男性に対して“綺麗”というのは失礼でしたでしょうか……でも、私は私の選択を信じます。私の初期刀になるのは、あなたしかいなかったんだと」
「……」
「山姥切さん?」
「わかった。俺はあんたの……初めての刀だ。あんたの望みを叶えるために、力をふるおう」
「ありがとうございます。これから、よろしくお願いします」
最後まで目を合わせてくれることはなかったけれど、彼の言葉に嘘偽りがないことはわかった。
彼よりも神格の低い私に、彼は言ってくれた。
力を貸してくれると。
今はそれだけで、その事実だけで充分だ。
歴史の改変を阻止する。
それは私一人の力では成し遂げることは絶対にできない。
山姥切さんと、そしてこれからこの本丸に顕現するであろう刀剣男士たちの助力がなければ。
「……今日はもう休め。目が冴えているかもしれないが、体に障ってはことだ」
「山姥切さんは…?」
「あんたを部屋まで送り届けたら、俺も休む」
「わかりました。よろしくお願いします」
私の言葉を聞いてから、山姥切さんはすっと立ち上がる。
私に向かって伸ばされた手を取って、彼の力を借りて私もしばらくぶりに立ち上がった。
「ありがとうございます」
助けてもらった礼を述べれば、またふいっと視線を外されてしまった。
いつか、この距離をもっと縮められたら、と思う。
彼に相応しい主になれるように、私も日々精進しなければ。
全ては、これから。
私はきっと忘れない
今日見たあなたの瞳の美しさを
《終》
5/5ページ