きみはここから
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バケツをひっくり返したような雨。
──とまではいかないまでも、かなり大粒の雨がざあざあと大きな音を立てて降り注いでいた。
つい先ほどから降り始めたとばかり思っていたその雨は、早々に地面に多数の水たまりを作り上げていた。
信じられない。
さっきまではあんなにも晴れていたのに。
この天気の変わりようは一体何だ。
今朝は遅刻しかけたものだから、落ち着いて朝食をとることもできなかった。
そのおかげで、いつもなら見ているはずのニュースも天気予報も見損ねてしまった。
登校の支度もそこそこに私は家を飛び出したのだった。
だから、今日まさか夕刻からこんなにも激しい雨が降るなんて微塵も知らなかったのだ。
……それに、誰もそんな話をしてもいなかったし。
他人のせいにするわけではないけれど、もしも誰かが早い時刻に本日夕刻から雨が降ることを話題の端に挙げてくれていたなら、私は何かしらの対処を取ることができただろう。
相澤先生に許可を取って、傘を購入させてもらいに行くなり。
誰かに傘を二本所持していないか尋ねて借りられないかお願いするなり。
もっと他にも対応策はあったはずだ。
でも今更後悔してもどうしようもない。
もうすでに雨は降っていて、やむ気配はこれっぽちもないのだから。
空は分厚い雲に覆われ、太陽の光を通すことを許さない。
それが原因で辺りを覆う薄暗さに私は思わずため息をこぼした。
さて、どうしようか。
どうすることが最善だろうか。
そもそも選択肢なんてほとんど残っていないに等しいような気がするけれど。
まだ誰か教室に残っているだろうか。
入れ違いになってしまう可能性が無きにしも非ずではあるけれど、もしも誰かがまだ残ってくれていれば、傘に一緒に入れてもらえないかお願いができる。
この雄英高校でヒーローを目指しているクラスメイトだ。
まさか断られる、ということはないだろう……たぶん、きっと。
そうであってくれ、と願わずにはいられない。
少なくとも私が逆の立場であったなら、間違いなく一緒に帰ってあげるし、なんだったら家まで送ってあげるだろう。
雨に濡れて風邪でも引いてしまったら大変だし。
私たちヒーローの卵にとって、一日は──いや、一分一秒だって無駄にできないのだ。