全てを持って生まれた君は今
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私と轟くんの距離感を、私はいまいち図りあぐねている。
クラスメートであることは事実だ。
でも、二人きりで、それも相合傘というとても近い距離で帰るほどに親しい仲であるかといわれると否定せざるを得ない気がする。
轟くんが私のことをどう思っているのかはわからない。
こうして声を掛けてもらえるくらいだから、嫌われてはいないのだろうけれど、それ以上のことは判断しかねる。
いつの間にかまた空を見上げていた轟くんはおもむろに空を指さした。
ゆったりとした動きに目を奪われて、私は彼の指先、そしてその指先が指し示す方向を見つめた。
「でももうすぐ雨、やみそうだな。向こうの空が明るい」
「あ、ほんとだ」
先ほどまで分厚い雲に覆われていたけれど、いつの間にか少し晴れ間がのぞきかけている。
この調子なら本当に一時間後には先ほど見た天気予報の通りに雨は上がって曇り空になるかもしれない。
勢いのままに突っ走って帰らなくて本当によかった。
びしょ濡れで帰宅したのに、すぐに雨がやんでしまっては、きっと激しい自己嫌悪に襲われてしまっていたことだろう。
ありがとう、轟くん。
君が声を掛けてくれたおかげで、私は濡れずに家に帰ることができそうだ。
直接お礼を言ったところで、きっと彼を困らせてしまうだけだ。
そう思った私はそっと心の中で彼にお礼を言った。
終わりの見えている一時間ならなんとかなりそうだ。
サポート科の明ちゃんのところに相談に行ってもいいし、教室で授業の予習復習をしていてもいい。
これからどうしようかと思案していれば、声が上から降ってきた。
もちろん声の主は言うまでもなく轟くんだ。
「なぁ雨、止むまで話しないか?」
空を見ているとばかり思っていた轟くんは、いつの間にか私を見下ろしていた。
エンデヴァーさんと同じ青い瞳と、アッシュグレーの瞳が真っ直ぐにこちらを見据えている。
伏し目がちになっているために、男の子なのに長い睫毛が瞳に影を落とす。
あまりに整ったその造形美から、私は目を離せなくなってしまった。
いつもなら絶対に逸らしてしまうのに。