全てを持って生まれた君は今
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見上げれば曇天。
分厚い雲の隙間からしとしとと音もなく雨が降り注ぐ。
昇降口で空を見上げて途方に暮れる私の横を、何人もの生徒が通り過ぎていく。
でも誰も私を気に留めたりはしない。
そして私もそれを気にしたりはしない。
むしろ知らない人に声を掛けられることの方が少し、怖い。
お世辞にも社交的だといえない私は、クラスメートの三奈ちゃんや切島くんのように誰とでもうまく話せるわけじゃない。
入学してからしばらく経って、クラスメートとはさすがに普通に話せるようになった。
それでもまだまだぎこちなさは払拭しきれていない、とたまに思う。
こんなことでは将来ヒーローになったときが少し不安だけれど、そこはこれからの努力次第、だと思いたい。
そんなことをぼんやりと頭の片隅で考えながら、往来の邪魔にならないように屋根のあるぎりぎりの場所に屈みこみ、携帯端末で天気予報を検索する。
小さな画面に映し出された一時間刻みの予報は次の一時間では曇りマークに変わっている。
……本当にそうだろうか。
授業中に窓の外を見た時よりは幾分か弱まっているような気がするけれど、とてもあと一時間の間に止むとは思えない。
止むとも知れない雨のためにここで一時間待つのか。
それとも制服が濡れるのを我慢して全力で雨の中帰路に着くか。
途中で傘を買えばびしょぬれにはならずに済むかもしれないけれど、今日のように傘を忘れて急遽買った傘が玄関には数本立てかけられている。
あのどうしようもない傘の本数を増やすのは少し憚られた。
うんうんと唸っている間にも生徒は続々と帰宅していて。
私のように傘を忘れている生徒はどうやら一人もいないようだった。
天気予報を確認していなかったのは私だけだとでもいうのだろうか。
それはそれですごい確率のような気がする。
まったくもって嬉しくないけれど。
誰か知り合いでも通りかからないだろうか。
その子がもしも傘を持っていたら、途中まで一緒に傘に入れてもらえないかお願いしたい。
できれば、女の子で。
お茶子ちゃんや梅雨ちゃんだと嬉しいけれど、そんな都合よく二人が現れるはずもなく。
いつの間にか昇降口は人がまばらになっていた。
今朝の私、どうして天気予報を確認しなかったかな。
いや、そもそも天気予報を見る見ないにかかわらず、鞄の中に折り畳み傘を一本忍ばせておけばそれで済む話なのかもしれない。
それを今更後悔したところでどうしようもないのだけれど。