あなたは私の太陽
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「日向くんのこと、待ってたの」
私がそう言えば、日向くんは満面の笑みを浮かべる。
ああ、わかってないな、この感じは。
むしろ私の言葉の意味を正しく理解したのは遅れてやってきた仁花ちゃんで。
そわそわと日向くんと私の顔を交互に見遣ってから、日向くんの学ランの袖を引いた。
「わ、私、先に帰るね!」
「え?なんで?もう暗いし一人じゃ危ないよ?」
バス停まで送っていくつもりで一緒に歩いてきたのだろう。
日向くんは仁花ちゃんの言葉の真意にも気づかずに頭の上に疑問符を浮かべる。
説明ができないわけではないのだけれど、言葉にするのはなんだか少し恥ずかしく思われて、私はぽんぽんと日向くんの背中を押した。
「もう少しここで待ってるし、仁花ちゃんをバス停まで送ってきてあげて?」
「え!?だ、大丈夫ですよ、悠さん!今日寒いですし、私なんかのために一人でお待たせしてしまうのは──」
「いいから!日向くんと少しお話もしたいから、ね?」
仁花ちゃんの言葉を遮って、私は強い口調で言う。
拒否権はない、と年上の特権をちらつかせるように。
一瞬それでもなお食い下がろうという姿勢を見せかけた仁花ちゃんだったけれど、少しばかり逡巡してから小さく頷いた。
「それではお言葉に甘えて…」
「うん、また今度一緒に甘いものでも食べに行こうね?」
「はい!よろしくお願いします!」
「じゃあ、行ってきます。すぐ戻ってくるんで!」
ひらひらと手を振って二人の背中が遠くなるのを見送ったあと、私はまた一人夜空を見上げた。
先ほどよりもずっと早く、ずっと高く鳴る鼓動に鳴りやめ、鳴りやめ、と念じながら。
***
「お待たせ!しました!」
ものすごい勢いで戻ってきた日向くんは私の目の前で急ブレーキをかけて自転車を停車させる。
さすがかなりの距離を自転車通学しているだけのことはあって、脚力が桁違いだ。
もしも烏野高校に自転車競技部があったなら、日向くんはきっとエースクラスになっていそうだ、なんて思いながら笑顔を作る。
引き攣ってはいないだろうか。
どうにもいつものように笑えている気がしない。
私の方が日向くんよりも年上で。
いつだって余裕のある大人の女性でいたい。
そう思ってはいるけれど、情けなくも今の私はとても狼狽している。
平静には程遠い。
一つ大きく深呼吸をしてから、私は真っ直ぐに日向くんを見つめる。
私より少しだけ背の高い日向くんの瞳は、やっぱりほんの少しだけ私の目線より高い位置にあって。
下から覗き込むように見れば、日向くんはますます嬉しそうに私の瞳を覗き返す。
「今日は日向くんに渡したいものがあって来ました」
ともすれば上擦って、震えてしまいそうになる声に怯えながら、なんとか言葉を紡ぐ。
そして鞄の中に隠していた小さな包みをずいっと日向くんの前に差し出した。
可愛らしくラッピングした(つもりの)包みを見て、日向くんは一瞬何が起こっているのかわからない、といった表情を浮かべた後、ややあってからようやく意図を理解したのか瞠目し、その後に先ほどよりも数倍瞳を輝かせた。
日向くんは会うたびに百面相で、見ていて本当に飽きない。
ころころ変わる表情はとても可愛らしくて、格好よくて、いつだって私をどきどきさせる。