あなたは私の太陽
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指先はもうとっくの昔に氷のように冷たくなって。
暖を取るために買ったミルクティーもすっかり冷えてしまって、鞄の中に放り込んだ。
緊張しすぎて少し──いや、かなり早く来すぎてしまったらしい。
待ち人未だ来たらず、だ。
真っ黒なインクをこぼしたような深い夜の闇に、私の吐く白い息が溶ける。
空は雲一つなくて。
無数の星の煌きに、寒さで身は凍えるけれど思わず笑顔になる。
「日向くん、早く来ないかなー」
ため息交じりの私の空しい独り言はすぐに漆黒に飲み込まれた。
烏野高校の正門の前で一人空を仰ぎ見る。
まさか大学生になって、母校でもない高校に頻繁に訪れることになるなんて思いもしなかった。
まさか大学生になって、年下の見ず知らずの少年に一目惚れすることになるなんて思いもしなかった。
まさか大学生になって、バレンタインデーのチョコレートを渡すために寒空の下こんなにも待つことになるなんて思いもしなかった。
でも。
どれも嫌じゃない。
むしろ心地よくて。
わくわくして。
世界がとても、輝いて見える。
高校生の時よりもずっと、ずっと。
高校の頃がつまらなかったわけじゃない。
友達もたくさんいたし、勉強もそれなりにできたし、部活だって頑張った。
だけど、それ以上に今が楽しくて、明日が待ち遠しくて。
歳を取って大人になっているはずなのに、心はなんだかあの頃よりもずっと幼い子供になっているような気がする。
「あれ?悠さん!?」
自分の名を呼ぶ声に心臓が跳ね上がる。
「やっぱり悠さんだ!どうしたんですか、こんな時間に!?」
夜の暗闇の中にあっても太陽のように煌めく光。
私が待ちわびていた人。
日向翔陽。
朝練をして、授業を受けて、放課後に部活をして。
それでもなお元気いっぱいの彼はとても眩しい。
日向くんは私の姿を見つけるなり、すごい勢いで自転車を押しながら走ってくる。
隣を歩いていた仁花ちゃんを置き去りして。
日向の突然の行動に身体を強張らせた仁花ちゃんだったけれど、その先にいるのが私だと気づくと恭しく頭を下げた。
私もそれに倣って軽く会釈をすれば仁花ちゃんは嬉しそうにほころんだ笑顔とともに小走りでこちらへやってきた。
歳はそんなに離れていないはずなのに、この二人は本当に可愛らしい。