束の間の夢と永遠の夢
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いつもなら気にならないはずの潮風が。
大好きな筈の小波の音が。
今は、今だけは。
どうしようもなく煩わしく感じられた。
「当たり、だよね。そんな顔してる」
気にしている筈なのに、まるで何事もないかのようにノエルは言った。
まだ15歳の少女であるのに。
ティーダの知るどの15歳の女の子よりも儚げで悲しげで。
何よりも感情を自分の内側に抑え込むのがうまいと思った。
「どうして俺がノクスのことを考えてるって分かるッスか?俺ってそんなに顔に出てる?」
ティーダが単刀直入に尋ねると、ノエルはほんの少しだけ驚いたように飴色の瞳を見開いた。
そしてその後に笑った。
年相応な無邪気な瞳で。
ノクスと「同じ」表情で──
「分かるよ。見てる方は分からなくても、見られてる方はよく分かる」
そこまで無邪気に言ってから表情が泣きそうに崩れる。
笑おうとしてうまく笑えなかった顔。
スピラに来てからそんなに経たないけれど、何度も見てきた。
笑い損ねたノエルの微笑みを。
「キミの瞳がとても遠くを見ていて、とても真剣だから」
ノエルの言葉に、ティーダは返すことができなかった。
返すべき言葉が見当たら無かった。
今の自分が何を言っても彼女を傷つけてしまうような気がして。
少なくとも今のままの中途半端な自分では、彼女に本当の、心からの笑顔を向けてもらうことはできないとわかっていたから──
長い沈黙が2人を包み込む。
ノエルもまたその言葉の続きを見失ってしまっていた。
波の音と人々のざわめきだけがやたらに響く。
その喧騒がより一層二人から言葉を奪っていった。
そんな、永遠に続くかと思われた沈黙は、当事者のティーダとノエルではなく、第3者のルールーによってやぶられた。
「二人してそんなところで何をしているの?」
「何でもない、よ?それよりルールーはどうしてここに?」
「明日にはルカを発つからそのための話し合いよ。二人も早く来てちょうだい」
ルールーはそれだけを告げると踵を返して戻って行った。
ティーダは呆気にとられていたが、ノエルはすぐさまティーダの服を軽く引いて、ルカのシアターの方向を指差した。
「みんな待ってる。行こ?」
ティーダに向けたその表情には、もはや曇りはなかった。