眠れる獅子と星の雫
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ドオォォォン──
耳を劈くような音が響き渡って、私とスコールはほぼ同時に闇色の夜空を見上げた。
空を飾る大輪の花。
赤や青や黄や。
さまざまな形をとって、花火は空を飾っている。
ばっ、と開いてすぐに名残を残さずに消えてゆく。
『儚い』という言葉の意味をしみじみと実感せずにはいられない。
「わぁ──綺麗……」
私は思わず溜め息混じりに呟いてしまった。
一方のスコールはといえば何も言わずにただ絶え間なく上がり続ける花火を無言で見つめていた。
その後すぐにパーティ会場の方からも、ざわついた声が聞こえてくる。
きっと感嘆の声だと思う。
こんなにも大きくて綺麗な花火を見るのは初めてだったから。
「私、空に打ち上げられた花火を見るの初めてなんだ」
私はぽつりと呟いた。
返事は別に期待していなかった。
だってスコールは積極的に自分を他人に伝えようとはしない人だったから。
でも、応えは返ってきた。
「俺も……初めてかもしれない」
まるで独り言のような言葉。
でも、それは確かに私が言ったことに対応していて。
私は思わず頬が緩むのを感じていた。
「じゃあさ、手持ち花火はした事あるの?」
打ち上げられる花火の巨大な音に負けないように、私は少し声を張り上げた。
それでも聞き取りづらかったのか、スコールは少し腰を折り曲げて、耳を近付けた。
「……ある、気がする。あまりはっきり覚えてないけどな」
「あ、私も同じ!ね、今度皆で花火しようよ。私、皆を誘うからさ」
「……そのうちな」
拒絶されなかったことが嬉しくて、私は笑った。
その間もひっきりなしに、空に花火は打ち上げられ続けている。
私の髪もスコールのブルーグレーの瞳も花火の色を反射して、いつもよりもずっと綺麗だった。
会話らしい会話はそれ以上にはなくて寂しかったけど、今日は十分に満足だった。
私がスコールの事を好きなのかどうかはまだはっきりとは分からない。
それでも、この夜空の大輪の花火が私達をほんの少し、近付けてくれたような気がする。
《終》