眠れる獅子と星の雫
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項垂れたような沈んだ声。
しかしそれとはあまり接点の見当たらない言葉。
シンティアの真意を汲み取れない。
それでも彼女の瞳は真剣そのもので。
今や遅し、と俺の返答を待っていた。
「いや、誰とも会ってない」
というかそもそも、まだ朝も早い。
ゼルやセルフィあたりはまだ寝てるに違いない。
俺だって、いつもならまだ眠っている時間だ。
今日はたまたまシンティアが押し掛けてくる少し前に偶然目が覚めただけだ。
だがシンティアにとっては俺のその言葉こそが何よりも重要だったらしく、眉間に皺を寄せた不機嫌そうな表情から一変して、きらきらと瞳を輝かせて破顔一笑した。
癪だけど、やっぱりシンティアは笑顔でいるのが一番いい。
「良かった。じゃあ一番は私のものだね」
「は?」
ますます意味が分からない。
一番が何だと言うのだろう。
シンティアの言葉の意味が分からずに、今度は俺が不機嫌な表情を浮かべれば、何を思ってかシンティアはいきなり俺の頭を撫でた。
「スコール、生まれてきてくれて、私に出逢ってくれてありがとう。お誕生日、おめでとう!」
ああ、そういえば今日は誕生日だったっけ。
さして誕生日に興味がないから忘れていた。
どうやらシンティアは一番に俺におめでとうと言いたかったらしい。
そんなことしなくたって、シンティアからもらう言葉が、何よりも“一番”嬉しいのに。
その気持ちは胸の内に隠して。
俺はシンティアから視線を外してから一言呟いた。
「ありがとう」
生まれてこれたことに
ありったけの感謝を
この命があるからこそ
出逢うことが出来たから
愛し合うことが出来たから
君からの言葉で
俺は世界で一番の
幸せ者になるんだ──
《終》