束の間の夢と永遠の夢
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夜のルカは昼間の賑やかさが嘘のように静まりかえっていた。
ティーダは正直驚きを隠せなかった。
活気のあるルカだから自分の知るザナルカンドのように夜も眠らず、ネオンライトに照らされているのだとばかり思っていた。
こんな時には嫌でも自覚させられた。
ここは自分のいた場所とは全く世界が違うのだと。
アーロンがいて、シンがジェクトだと知って。
ノクスによく似たノエルがいて。
もしかしたら自分のいた場所と繋がっているのかも知れないという淡い期待は、いつも唐突に打ち砕かれた。
ただ、どれだけ打ちのめされても、前に進むことを止めるわけにはいかなかった。
ノクスが待ってくれていると思うと。
諦める訳にはいかなかった。
ノエルが何処にいるのか、大体の見当はついていた。
この間ルカを訪れたばかりで、この街のこともほとんど分かってはいなかったけれど。
考え事ができそうな場所は本当に限られていたから。
意識しなくともティーダの足は自然とそちらへ向かう。
ノエルに会って話しても、彼女を傷つけるだけかも知れない。
それでも、話さないままでいる方がよほどノエルを傷つける気がした。
「ノエル!」
ノエルの姿を見つけたティーダは思わず大声で彼女の名を呼んだ。
大声を出す必要などどこにも無かったが、とにかく呼ばずにはいられなかった。
深く意識はしなかったけれど。
ティーダがノエルを呼ばずにいられなかったのは、彼女の後ろ姿に、今は亡き母の姿を重ねてしまったからかも知れない。
ジェクトを、番を追うように死んでしまった母。
亡くなる間際に海を眺めていた姿に、あまりもよく似ていたから。
明かりのない暗い海を、「笑顔の練習」をした場所から見下ろしていたノエルはティーダの声にゆっくりと振り返った。
「さっきの時と反対、だね」
なんて小さく笑いながら。
その瞳には明らかに悲しみの色が浮かんでいたのに。