愛を知らないままで
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だけど、そんなイフの口から紡がれたのは、僕が望んだような言葉ではなかった。
姉さん、あなたは時にとても残酷だ…
「…カダージュ、えらいえらい…よく、頑張ったね」
まるで子供扱い。
イフは僕を“男”として捉えてくれてはいない。
ただの可愛い、“弟”──
それ以上でも。
それ以下でもない。
「なんだよ…それ」
僕の力ない呟きにも、姉さんの表情は相変わらず穏やかなままで。
僕の心は言い表しようもなくざわめいていた。
怒ればいいのか、悲しめばいいのか、嘆けばいいのか。
そんな感情をどう処理すればいいのか、所詮人形に過ぎない僕には分からなかった。
でもこの苛立ちを、衝動を自分の小さな躯の内に抑えておくことは、どうしても出来そうになかった。
僕はおもむろに、眠ったままのイフの口唇に自分の口唇を押し付けた。
額でもなく、頬でもなく。
口唇に。
そうしたのはイフに僕は子供でもなく、弟でもないんだと知って欲しかったから。
認めて欲しかったから。
僕は姉さんを起こしてしまわないように椅子からそっと立ち上がった。
そして未だ眠りを貪る姫君を見下ろす。
「僕は必ず母さんの願いを叶えるよ…そして──きっと僕自身の願いも叶えてみせる」
僕は自分の心の内の決意をそっと呟く。
そして静かに踵を返し、姉さんを一人部屋に残したままその場を後にした。