愛を知らないままで
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僕はイフの柔らかい髪に触れる。
爽やかな朝の光に透ける神秘的な青銀の髪。
鋼のように冷たく、硬い印象しか与えない僕の銀の髪とは全く違う。
優しく撫でるように梳かしてみても、イフが気付く気配は一向にない。
段々もどかしく思えてきて、僕はイフの横の椅子にそっと腰を降ろした。
甘い、イフの香水の香りが鼻に届く。
「ねぇ…イフは僕たちの…僕のことをどう思ってるの?」
返事は、ない。
それでも僕は続ける。
イフの耳にこの言葉が届いていなくても構わなかった。
ただ、言葉にしておきたかった。
「僕はこんなにもイフが好きなのに…」
イフが兄さんのことを気にかけてることは僕にだって分かる。
二人は言葉では言い表せないような、強い絆で結ばれている。
それが友情や、仲間の枠じゃ括れないことは否が応でも分かる。
でもイフはそんな兄さんといることよりも、僕たちと共にいることを選んでくれた。
それは自惚れてもいいことなのかな。
姉さんの、イフの心の中に僕の入り込む隙間があるんだって。
兄さんからイフを奪っていってもいいんだって──
「…ジュ…カダージュ」
そんな邪なことを考えているとイフの唇が小さく動いて僕の名前を呼んだ。
とても小さな声だった。
でも聞き間違えたりしない。
確かに僕の名前だった。
それが妙に嬉しくて僕はイフにそっと顔を近付ける。
どんな小さな声も、どんな言葉も聞き逃したりしないように。
「どうしたの、姉さん?僕はここにいるよ?」
僕の言葉を聞いて、イフの唇がゆっくりと笑みの形に持ち上がる。
熟れた林檎のように赤い唇に、僕は思わず見入ってしまう。