最初で最後の君との約束
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「それじゃあ、私はこれで」
目的を成した梨紅さんは、満足そうに踵を返す。
先ほどとは逆に、今度はオレが梨紅さんを引き留める。
「待って!夜も遅いし危ないから送ってく!」
「駄目だよ、尽くん。帰り道、尽くんが一人になっちゃうじゃない。私はそっちの方が心配。私は高校生だし、いざとなったら大声を──」
「でも、梨紅さんは女の子だろ!」
梨紅さんの言葉を遮って声を上げる。
確かに小学生が一人で夜道を歩くのは危険かも知れない。
でもオレは男だ。
でも梨紅さんは女で、とても、とても魅力的な人だから、心配でたまらない。
オレは小学生で。
梨紅さんは高校生で。
何を引き換えにしても縮まることのない隔たりに、いつももどかしさを覚える。
どれだけ彼女のことを思っても、オレの本当の気持ちは彼女には届かない。
“友人の弟”としか見られていないのが、つらい。
でもオレは彼女と出会ったあの日に誓ったのだ。
必ず彼女を振り向かせてみせる、と。
彼女に一人の男として認めてもらうのだ。
「ねえちゃんも一緒なら文句ないだろ?」
「え?」
「帰りが一人だから危ないってことは、二人ならいいってことじゃん」
何か言いたげに視線を向けてくる梨紅さんの手をぐいっと引き寄せて、玄関の中に招き入れる。
「尽くん!?」
「お父さんとお母さんにもちゃんと許可もらってくるし、ちょっとここで待っててよ」
とどめの一言に梨紅さんは困ったような表情を浮かべたけれど、渋々ながら納得はしてくれたようで小さく頷いた。
あとはお父さんとお母さんの説得と、ねえちゃんを引きずってくるだけだ。
はばたき市はとても治安の良い街だけれど、絶対とは言い切れない。
何かが起こってからでは遅いのだ。
暗い夜道を女の子一人で帰すなんてことは、たぶんうちのお父さんとお母さんは許さないはずだ。
むしろ、お父さんが送っていこう、とか言いださないかの方が心配だ。
ねえちゃんはまぁ、たぶんついてきてくれるだろう。
なんだかんだいっても弟に甘いし、友人は大切にする方だから。
「ねえちゃーん!」
姉を呼びながら階段を駆け上がる。
早く一人でも梨紅さんのことを送っていけるようになりたい、と思いながら。
《なにをもらっても》
あなたからはいつも貰うばかりで
貰ったものを大切にすることでしか
オレはあなたにお返しができない
《終》
77/77ページ