最初で最後の君との約束
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その男の子の笑顔は、馬鹿にして、とかそういったものじゃなくて、何だかあたたかいものだった。
それこそ、初対面の私に見せるような笑顔ではないと思った。
誰か大切な、心を許した人にだけ見せるような笑顔。
「私、何か変な事言った?」
私が尋ねてみると、男の子はすぐに笑顔を消して、無表情に戻った。
素直に「勿体無いな」と思った。
この人の笑顔はとても優しいものだったから。
「お前、ちょっと変わってる」
「……は?君、初対面の人に対して、それはちょっと失礼じゃない?」
私がちょっとムッとしながら言うと、彼は少し悲しげな表情を浮かべた。
待って、その表情をしたいのは寧ろ私の方であって、どうして君がそんな表情するの?
なんだか私の方が悪い事してるみたいじゃない。
「君、名前は?」
「葉月珪」
「うん、葉月くん。そういうの、良くないと思う」
「……どうして?」
「相手を不快な気持ちにさせるから。自分がされて嫌な事は他人にしちゃいけないの」
今日初めて出会った人に対して、何を自分の考えを述べてるんだ、と頭では冷静に判断しているのに、口が言葉を紡ぐ事を止める余裕がない。
何を必死になっているんだろう、私は。
男の子、葉月くんは私を見下ろしたままで何か考え込んでいる。
私の言った言葉の意味でも考えているんだろうか。
でもやがて口を開いた。
「分かった。今度からはそうする」
「うん、絶対そうした方がいいよ」
私の考えが分かってもらえて私は満足する。
どんな事でも、伝えなくちゃ伝わらない事だってあるよね。
私はいつまでも腰を降ろしたままだったことに気づいて立ち上がろうとする。
すると、私の目の前に手が差し伸べられた。
私と葉月くん以外に此処に人はいないから、その手が葉月くんのものだとすぐに分かる。
私はその手を掴んでゆっくりと身体を起こす。
あれ?
何だろう、デジャヴ?
この感覚を、憶えているような気がする。
でもすぐにその感覚は私の内側に押しやられる。
「思い出してはいけない」とでも言うように。
「ありがとう」
私は葉月くんの手を離して、スカートについた砂や草を払い落とした。
その時にはすでに私の頭の中には先ほどの既視感のことはすっかり忘れ去られていた。
