最初で最後の君との約束
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「そういえば、練習試合、近いんだっけ?」
「ああ、次の日曜日だぜ」
俺の言葉を聞いた梨紅はぱらぱらとブルーの小さな手帳を捲る。
そして何かを書き込んで徐に手帳を閉じた。
そして子供のような屈託のない笑みを浮かべる。
「その日、ちょうどバイトが休みだから応援に行くよ。差し入れでも持って」
「ばっ…さ、差し入れなんていらねぇよ」
「えー、要らないの?せっかく手作りで何か持っていこうと思ったのに」
梨紅が発した“手作り”という言葉に、俺は過剰に反応する。
梨紅の料理の上手さは、調理実習の時に既に実証済みなのだ。
いや、それ以上に、梨紅に手作りで何かをもらうという行為自体が…嬉しかったりする訳で。
何とかして前言を撤回しなければ。
テストで赤点しか取った事のない頭をフル回転させた所で名案が思い浮かぶ筈もなく。
俺がまごついていれば、梨紅は小さく笑い声を漏らす。
「ふふっ、和馬、耳まで真っ赤になってるよ?」
「なってねぇよ!」
「あはは、心配しなくてもちゃんと差し入れは持って行きますよ。それで無理矢理にでも食べさせちゃうんだから」
この女には敵わない。
何度も何度もそう思わされる。
無敵の笑顔で押し切られては、 俺は何も言い返せなくなるから。
人形みたいな微笑みも
天真爛漫な無防備な笑顔も
どちらも紛う事なくお前のもので
でもだからこそ
どちらも可愛らしい、
なんて思ってしまうんだ──
《終》
