最初で最後の君との約束
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泣かないで
王子は必ず迎えにくるから
約束──
そう言ってくれたのは誰だった?
そもそもその記憶は正しいのか。
私が描き出した夢に過ぎないのではないか。
そんな事さえ分からない。
だけど確かに「約束」は私を縛り続けている。
でも、分かるんだ。
だけど、感じるんだ。
「君」は確かに存在していた。
そんな、気がするんだ──
《此処から始まる》
この街に帰ってきて、すぐに春はやってきた。
感傷に浸る間もない程に、容赦なく時間は流れていった。
まるで瞬きでもする位の速さで。
気がつけば、桜はもう満開になっていた。
「梨紅ちゃん!早くしないと遅刻しちゃうわよ!」
一階下のリビングからお母さんの大きな声が聞こえてきて、私は大慌てでリボンを結ぶ。
おかしいな。
昨日の夜あんなに練習したはずなのに、思うように指先が動かない。
焦れば焦る程に綺麗な形に整わなかった。
「分かってるって!」
「分かってるなら早くしなさい」
容赦ないお母さんの声に私は半泣きになりながらリボンを結んだ。
毎日がこんなに慌しかったらたまったものじゃない。
私はこの瞬間に明日からもう少し早く起きることを心に決めた。
私は何とかリボンを結び終えて鞄を握り締めて自分の部屋を後にする。
降り慣れた階段を勢いよく駆け下りてリビングを覗く。
「じゃあ、お母さん、お父さん、行ってくるね!」
元気よくそう言うと、玄関を飛び出す少し前にお父さんとお母さんの見送りの声がした。
その声を聞かないとなぜだかいまいち調子が出ないんだよね。
子供の時からずっとそうだったからかも知れない。
慣れって本当にすごいな。
……感心してる場合じゃなかった。
早く学校に行かないと。