右手に太刀を左手に君の手を
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私は顔が熱くなって、両手でぱたぱたと扇いだ。
それでも一向に火照りは収まりそうにない。
挙げ句の果てには、慶次は横でけらけらと笑い始めている。
「なによー……笑わなくたっていいじゃない」
「はっはっは、千里がいつまで経っても慣れないものだから面白くてなぁ……」
私は褒められたり、持ち上げられたりすることに慣れていなかった。
と言うよりは寧ろ、全く免疫がなかったと言っても過言ではない。
そしてそのままこの世界に飛ばされて。
三成や政宗に非難されたり、他の武士たちから陰口を叩かれたり、そういった負の感情に対峙することには慣れている。
私が元いた世界には、そんなどうしようもない、汚い感情がそこら中に溢れていたから。
だからこそ逆に、幸村や慶次の真っ直ぐな言葉に弱い。
上手く切り返したり、かわすことが出来ない。
冗談だと分かっていても、孫市の言葉にさえ、未だに緊張してしまう。
「まぁ、そこが千里のいい所でもあるんだがねぇ」
慶次はわしゃわしゃと私の頭を撫で回す。
その大きな掌の感触が嬉しくて、私は無意識の内にそっと目を閉じる。
こんな幸せで何気ない時間がずっと続けばいいと思う。
叶わないと、分かっていても──
私はいつまでもそうしていてもらいたい気持ちをぐっと堪え、静かに立ち上がった。