右手に太刀を左手に君の手を
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今までの出来事が走馬灯のように蘇る。
鮮やかに、まるで昨日のことであるかのように。
「私は最初に出会えたのが慶次だったから良かったよ?でももし慶次じゃなかったら、他の悪人だったら。誰にも助けてもらえなかったら……」
最悪の事態を想定しながら、私は言葉を紡ぐ。
今となっては潰えた可能性だ。
しかしもしかしたら、選び取ったかも知れない可能性でもあったのだ
「私だってあの女の子と同じように、悪事に身を染めていたかも知れない。そして慶次や幸村たちに討たれてしまう結末もあったかも知れない……そう思ったら、やっぱり辛かったんだ」
あの子は私と何も変わらない。
痛みだってある。
感情だってある。
守りたいものや、好きな人だっていたかも知れない。
彼女に開かれていた未来を、可能性を、私は自分が生きたいが為に摘み取ったのだ。
それは果たして許されることなのだろうか。
私がそこまで言い終え言葉に詰まっていると、慶次は優しく私の頭を撫でた。
「千里……お前は本当に優しい奴だな。この戦国の世には不釣り合いなくらいだ。でも、そこまで深刻に悩む必要はないんじゃないかねぇ」
「……」
「あの女はあの女、千里は千里、だろ。俺の横にいるのは、あの女じゃあない。千里だから此処にいる。もしも千里の代わりにあの女と出会っていても、俺は一緒に戦おうなんざ思わなかったさ。千里だから、共にある。俺はそう思ってるんだがな」
前向きで。
ひたむきで。
どこまでも真っ直ぐな言葉。
私だけに向けられた言葉に、私はどうしようもなく嬉しくなってしまった。
でも、同時に飾り気のない言葉に恥ずかしくもなった。