右手に太刀を左手に君の手を
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
先日も私は死闘を繰り広げたばかりだった。
いや、今回の場合は死闘、とまではいかなかったかも知れない。
いってみれば、ただの山賊の掃討だけだったからだ。
相手は民の平穏を脅かす悪人だ。
斬り殺したところで、感謝されこそすれ、疎まれることなどない。
それなのにも関わらず、今回の掃討戦の後の私の心中は穏やかではなかった。
わだかまりというのか、とにかくすっきりとしなかった。
それはきっと斬り殺した山賊達の中に、私と大して年端の変わらぬ少女が混じっていたから。
短く切られた漆黒の髪と、黒曜石のような瞳を持った少女。
私を睨みつける瞳は、どうしようもなく澱んでいたけれど。
私としたことが、そのあまりにも力強い瞳な圧倒されそうになった。
彼女の命を絶つことを、躊躇ってしまいそうになった。
あの時に慶次の声に我に返ることが出来ていなければ、私は彼女に殺されてしまっていたかも知れない。
今慶次と共に間借りしている小屋から少しばかり離れた草原に大の字に寝転がる私の上に、ゆっくりと影が落ちる。
私が立ち上がらないのは、影を作った人物が私に対して敵意を持っていないことが分かっているから。
それでなければ、とっくの昔に私は自分の腰に携えられた獲物を構えている。
「そんな薄着で外にいたら、風邪を引いちまうぜ?」
「大丈夫だよ。私が丈夫なのは、慶次が一番よく知ってるでしょ?」
「はっは!それもそうだな」
影の正体である前田慶次は暢気に笑った。
それにつられて私も唇を持ち上げた。
とても声を上げて笑う気分には、到底なれなかったけれど。
立ち上がる気配を全く見せない私に、慶次はすぐ横に腰を下ろした。