右手に太刀を左手に君の手を
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私は混乱する頭を何とか落ち着かせる。
今此処で慌てていても仕方がない。
「でもどうして幸村様は私が女だと……?」
「気絶した千里に焦って、幸村様が見ちゃったんだよ~。千里のサラシ……」
私は溜め息を漏らさずにはいられなかった。
仕合中に気を失うなんて、本当に情けない。
「いや~アタシも止めようとしたんだけどさ、幸村様制止の声も聞こえないくらい気が動転してたみたいなんだよねぇ」
くのいちの言葉が何故かとても遠くに聞こえる。
自分に対して紡がれているのに、右から左に流してしまう。
ただ私の頭には幸村様に謝ることしかなかった。
謝って、許しを乞いたかった。
欺いていたことは本当にいけないことだと分かっている。
でも叶うならば。
叶うなら、今迄と変わらずに接して欲しい。
無理だとは分かっているけれど願わずにはいられない──
「幸村様は今どこに?」
恐らくはもっとも鋭い攻撃を受けたであろう右脇腹を庇いながら、私は布団から立ち上がった。
くのいちは苦笑いを浮かべたけれど、私を止めるようなことはしなかった。
「たぶん自分の部屋じゃないの~?軽く衝撃を受けてたからどういう反応を返してくるか分からないけど……それでも行くんでしょ?」
私は無言で頷いた。
今すぐ会わなければ私の気がおさまらない。
「ちょっと、行ってくる」
「はぁい。行ってらっしゃーい♪」
相変わらずの笑顔で送り出してくれたくのいちに私は感謝する。
もし誰にもこの秘密を打ち明けられていなかったなら、私はきっとすぐに幸村様の所へは行けなかっただろうから。
ありがとう、くのいち。
感謝の気持ちを心の中でそっと呟く。
そして私は少し足早に幸村様の部屋へと向かった──はずだったのに。