右手に太刀を左手に君の手を
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次に私が“私”としての意識を取り戻したのは、右脇腹に鈍い痛みを感じて。
「……っ!」
私は声にならない呻きをあげて上半身を起こす。
慌てて辺りを見回すが、其処は見慣れた私の部屋だった。
「千里くん!大丈夫!?」
大きな声を上げながらくのいちが私の顔を覗きこむ。
栗色の瞳が心配そうに揺らいでいる。
「私…一体何を──?」
「覚えてないのー?」
私が呟くとくのいちが驚いた声を上げる。
でも本当に覚えていないのだから仕方がない。
幸村様と対峙した後の記憶が全くと言っていい程ない。
「幸村様とあんなに良い勝負してたのにぃ」
くのいちはそこまで言ってから、ちらりと私を一瞥した。
猫のような仕草に、私は思わず首を傾げる。
「……?」
「あのさ、千里が今此処で寝てたのは、幸村様との仕合で脳震盪起こしちゃったんだけどさ……」
そこまで言ってから、くのいちは言葉に詰まる。
いつもはっきりとした物言いをするくのいちだから、余計に違和感がある。
どうやら何か言い辛いことがあるらしい。
「その後何かあったの?」
私はくのいちを真っ直ぐに見据えてその先の言葉を急かす。
私が催促するものだから、くのいちも観念したように口を開いた。
そして彼女の口からは衝撃の真実が紡がれた。
「幸村様に千里が“女”だってこと、バレちった」
頭をぽりぽりと掻きながらくのいちは確かにそう言った。
幸村様に私が女だということを知られてしまった──
私はくのいちの言葉を頭の中で復唱した。
ずっと隠してきたのに。
隠していたことも明るみに出てしまった。