右手に太刀を左手に君の手を
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「そうか……そうだ、千里殿。今日は私と手合わせをしてみないか?」
「私と幸村様が…でございますか?」
「ああ。何か不都合でもあるのか?無理にとは言わないが」
一瞬沈んだような表情をなさる幸村様に、私は慌てて否定した。
この武田軍の中に幸村様と手合わせをしたくない者などいるはずがない。
それほどに幸村様の槍術の腕はすばらしいものなのだから。
「い、いえ。私のようなものを相手にしても、幸村様のご鍛錬にはならないのではないかと……」
「ははは、そのようなことは気にせずともよい。自軍の兵を鍛えるのもまた将としての勤めだ」
どこまでも義に厚く、忠実な幸村様の言葉に私は曖昧に微笑むことしか出来なかった。
幸村様の瞳は私を、本当の“千里”を見てくださってはいない。
そんなこと、ずっと前から分かっていたのに。
「千里殿、どうかしたのか?」
「いえ、なんでもありません。幸村様、本日の手合わせ、お願い致します」
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
そう言って、私と幸村様は一旦別れた。
次に対峙した時には仕合の相手。
手を抜くことは決して許されない。
相手に怪我を負わせても仕方のないこと。
それでも私は幸村様と手合わせをする。
己を高めるためだけに。
「浮かない顔してるねぇ。そんなに幸村様との練習が嫌?」
「くのいち殿……佐助殿から呼び出されていたのでは?」
「うん、終わった。大した用事じゃないのに呼び出すんじゃないっての!」
「ふふ、そんなことを言っては佐助殿がかわいそうですよ?」
「私のことはいーの!ね、さっきの質問の答えは?」
私は苦笑いを浮かべる。