右手に太刀を左手に君の手を
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でも、私はここで自分の手にした道を諦めるわけにはいかないのだ。
私の意志で決めたことだから。
そして守りたいものの為にも。
甲冑の音が響いて、私は俯いていた視線を上げる。
「あっ!幸村様だー!」
「幸村様……おはようございます」
「……千里殿か、おはよう。くのいち、佐助がお前を探していたそうだ。すぐに行ってもらえるか?」
幸村様は私にも挨拶をしてくださった後で、くのいちの方に向き直った。
幸村様は本当にお優しい方だと思う。
くのいちを呼ぶくらいのことなら、誰か配下のものに任せればよいのに。
「えー、面倒くさいなぁ……ま、仕方ない、行ってくるか。それじゃあね、幸村様、千里くん♪」
「あぁ、また後で」
手を振って、ひょいっと木の上に登ったくのいちを、私は幸村様と共に見送る。
すぐに屋根に飛び移り、軽やかに駆けていくくのいちを目で追いながら、私は幸村様には分からないように小さくため息を漏らした。
正直なところ、どこまでも自由でしなやかに生きる彼女が羨ましくて羨ましくて仕方がなかったから。
「千里殿は本当に熱心だな。参加義務があるわけでもないのにも関わらず毎回出席している」
「いえ……私のように非力なものでも少しでもお館様のお役に立ちたくて……」
女であり、大した剣の技術も持たなかった私を快く受け入れてくださったお館様。
そのお館様のために私が出来ることなら何だってしよう。
そのために強くなりたいと願うことは至極当然のことだと私は思う。
戦場の中で自分の身を守るだけではなく、私の大切な人たちを守るために。
幸村様は守られるような人ではないと分かっている。
それでも、唐突に彼に向けられる凶刃から身を挺してでも守り抜くために。