右手に太刀を左手に君の手を
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今日は合同で鍛錬が行われる日だった。
将や志願した兵が手合わせをして己を高めあうのだ。
私は将ではないけれど、合同で鍛錬が行われる日には毎回必ず参加するようにしていた。
私は手合わせをし、己を見つめ直すことこそが、武術の上達の上でもっとも効果のあることだと考えているからだ。
一人で型の練習を重ねるのもよいかもしれないが、実践のほうが確実に飲み込みが早い。
何よりも咄嗟の反応ができるようになる。
そして同時に励みにもなる。
私も強くならなければ──と。
その場には勿論幸村様の姿もある。
その傍らには私の秘密を一瞬にして見破った人物の姿もある。
しかし、私の秘密は心のうちに留めてくれ、他言するようなことはない。
「おはよう、千里“くん”」
「……あぁ、おはよう、くのいち殿」
いつの間にかくのいちが私の側にいた。
本当に気配の読めない人だと思う。
私と同じ女性でありながら、女性として影の道を歩む。
それとは対照的に、私は女でありながら、男と偽り日の当たる道を行く。
彼女といると、時々考えずにいられない。
私の生き方と、彼女の生き方。
一体どちらが幸せなのだろう、と。
まだ私たちの人生は長い、はずだ。
ここまでの短い人生の中で語ることはあまりに難しい問題であるかもしれない。
でも、なんとなく分かる。
くのいちの方が、きっと誇りを持って、自分の望む人生を生きている。