右手に太刀を左手に君の手を
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私は千里様の瞳を見据え、はっきりと言い放つ。
この胸に宿る決意に、想いに、偽りはないのだと。
「はい。何があってもお守りいたします」
「幸村様……」
あなたは私の名を呼ぶと、そっと微笑まれた。
いつもの花のような笑みに似た、否、それ以上に美しい笑顔だった。
そして、私が最期に見た、あなたの微笑み──
「真田様、真田幸村様。殿がお呼びでございます」
女房の声が聞こえて、千里様はゆっくりと私から離れられた。
名残惜しく残るあなたの体温が、あなたがこの腕にいたのだということを証明してくれる。
「すぐに参ります!」
私は女房に返事をしてすぐに立ち上がった。
千里様は黙ってその様子を見つめていらっしゃる。
涙のいまだ乾かぬ瞳を私に向けて、何かを刻み付けるかのように見据えている。
「それでは千里様、行って参ります」
「ええ、御武運を」
最後に交わされたのは形式的な短い言葉。
この時に、あなたへの愛を囁きでもしていたのなら、あなたは笑って私を見送ってくれたのでしょうか?
決して上手とは言えない微笑を背に、私は千里様の部屋を後にした。
この悪夢は一体何なのだろう。
あなたのぬくもりが今はとても遠くに感じられる。
眼前に広がるは灰色の世界。
「千里様……」
呼びかけても返事がないことは理解しているのだ。
しかしそれでも、あなたの名を、愛しい人の名を呟かずにはいられない。
鉄砲の音が今は聞こえない。
いや、今だけ聞こえていない。
またすぐにこの広大な戦場に巨大な音が響き渡るのだろう。
誰の悲鳴もなく、火花を散らせながら──
逃げなければ。
そう考え付くまでに、あなたの笑顔だけが、あなたとの思い出が何度も私の脳裏を掠めた。
《終》
