右手に太刀を左手に君の手を
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笑顔を作り損ねているということにもあなたは気づいておられない様子で、ただ涙が溢れてしまわぬように必死で堪えていらっしゃる。
私がこの二本の腕であなたを支えることが出来たのなら。
私があなたの涙を止めることが出来たのならどれほどよかったか。
私にはどちらも出来ない。
ただ、あなたの願いを忠実に叶えるだけ。
「でも、私は……あなたを失いたくはないのです」
そう言葉を紡がれた瞬間、千里様の瞳から涙が一筋、頬を伝った。
透明なその雫は、輪郭を流れ着物に吸い込まれた。
私は思わず、千里様の体を抱きしめた。
許されないことだとは理解していながら──
「幸村様……!」
あなたは私の名を呼び、私を抱きしめ返してくださった。
細い腕が、必死に私を求めてくださることが純粋に嬉しかった。
私は涙を流す千里様の背を撫でた。
そうすることしか、私には出来ないと思ったから。
それでもあなたは私の胸に顔を埋めたままで、嗚咽を漏らしていた。
あの花のような笑顔の裏側で、千里様はどれだけの涙を堪えてきたのだろう。
あなたが表情を曇らせれば周りのものが心配するということを、あなたは誰よりも理解していたのだろう。
あなたは本当に聡い方だから。
どうして私はそれに気づくことが出来なかったのだろう。
誰よりも近くにいながら。
誰よりもあなたに好意を寄せていながら。
「私はいなくなったり致しません」
私は千里様の体を抱きしめたままで言った。
これは誓いだ。
破られることのない、私から、あなたへの。
「勝頼様を守り抜き、そして、何があっても、千里様の元へ戻って参ります」
「約束でございますか?必ず守ってくださいますか?」
私の腕の中で、私を一心に見上げてくる千里様は、まだお館様が生きておられた頃の幼く、素朴な少女のままであった。
決して一人にはしない。
この愛しい人を──
