右手に太刀を左手に君の手を
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「私が沈んでいた時も、幸村様は優しく励ましてくださいましたね。私はあなたの言葉で救われていたのです。本当にありがとう」
千里様の父君、そして私たちのお館様であった武田信玄公が亡くなられてからの千里様の落ち込みようは尋常ではなかった。
それこそ、お館様の後を追い、千里様まで儚くなられとしまうのではないか、と千里様をよく知る者たちは気が気ではなかった。
だからこそ、私は暇さえあれば、千里様の部屋を訪れ他愛もない話をしたり、庭先へお連れして花を愛でたり…
千里様が私のことを初めて「幸村」と呼んで下さった時のあの幸せな気持ちは今でも覚えている。
千里様にとっては些細な出来事であったとしても。
「千里様がお元気になられたのは千里様のお心が強かった故でございます。そのようなお言葉、私には勿体ない……」
「謙遜する必要などありません。私はそう思うのですから」
「千里様……」
私の顔を見つめて真剣に話される千里様に、私は視線を外すことが出来なかった。
それほどに千里様の眼差しは私を引き付けてやまなかった。
「此度の戦……尾張の魔王と呼ばれる織田信長殿が相手だそうですね。徳川家康殿と連合の軍を率いると聞きました」
「!その話は一体誰から……!?」
私は驚きを隠すことが出来なかった。
千里様は誰よりも戦の絶えぬこの戦国の世を憂えておられた。
戦のない泰平の世が築かれることを願い、待ち望んでおられた。
だからまさか、そんな千里様の口から戦の話が出て来るなどとは全く予想だにしていなかった。