無意識の海より生まれ出づるもの
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すっかり冷たくなってしまった黒瑙の指先に俺はそっと息をはきかける。
そしてその熱が逃げないように、黒瑙の手を握り締めながら擦った。
黒瑙は俺にされるがままで、自分の指先を見つめている。
俺がちらりと盗み見た黒瑙の表情は、俺の知るどの表情よりも大人びていて。
黒瑙がなんだかとても遠い存在のように思えた。
「ふふ、くすぐったい」
黒瑙が笑い声を漏らしながらそう言った。
俺はくすぐったいなんて少しも思わないのに。
「少しの間くらい我慢しろよ。暖めてやってるんだから」
「はーい。大人しくしてますよ」
ちょっと不貞腐れたように言う黒瑙ではあったけれど、顔を見れば笑顔だから、怒ってはいないとすぐに分かる。
黒瑙の手を擦りながら、俺はずっと疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
最近はなかなか二人きりになる時間がない。
だから今を逃せば、もう機会はないような気がして仕方がなかった。
心臓の音がいやに大きく響く。
それを黒瑙に悟られてしまわないように、俺は努めて平静を装っていた。
「なぁ、もし黒瑙はこの先で和也と戦うことになったらどうする?」
あまりに唐突な俺の質問に黒瑙は驚いて、俺の瞳を捕らえる。
だけど俺にとっては突然のことじゃない。
ずっと前から黒瑙に聞こうと思っていたことなんだ。
和也が俺たちの前に現れたあの時から──
黒瑙の表情が曇りがちになるようになったのもちょうどあの頃からだ。
ずっと黒瑙を見てきたから分かる。
分かりたくなんてなくても。