無意識の海より生まれ出づるもの
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どこまでが冗談でどこからが本気なのか分からない。
でも黒瑙のことだ。
きっと全部本気なんだろう。
「私が落ちてもきっと尚也が助けてくれるって思ってたから。だから麻希を助けられたんだよ?」
悪びれた様子もなく、口許には穏やかな笑みさえ浮かべて黒瑙は言った。
本当に敵わない、と思う。
そしてそんな黒瑙だから好きで。
守りたいと思う。
「尚也は本当に優しいよね。私のやること、何でも許してくれるから。“誰かさん”と違って」
黒瑙はくすくすと笑いながら言った。
でもその“誰かさん”が誰なのか、俺には分かる。
黒瑙の目を見て話していたら間違うはずもない。
和也、だ──
相変わらず和也は黒瑙の心の一番深い所にいて、黒瑙を守っている。
あいつだけが黒瑙の支えなんだ。
俺では黒瑙を悪魔から守れても、闇からは守れない。
俺では黒瑙を心の底からの笑顔に導くことが出来ない。
「どうしたの、尚也?やっぱりどこか痛い?」
考えこんでしまっていた俺を心配して黒瑙は下から覗きこんでくる。
隣に腰を下ろしていた俺には嫌でも黒瑙の赤くなった指先が目に入る。
「大丈夫じゃないのはお前の方だろ?」
「?どうして?」
俺がそう言っても理由が分からないらしい。
ばちぱちと瞬きをして、俺をじっと見つめている。
「手、こんなに冷たくなってるだろ」
俺はすかさず黒瑙の手を取った。
いつの間に黒瑙の手はこんなに小さくなってしまっていたんだろう。
ずっと、和也よりもずっと長い時間黒瑙の側にいたはずなのに、俺はそんなことにも気付いていなかった。