無意識の海より生まれ出づるもの
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小さな時からずっと一緒にいたから分かる。
お前が何を感じ、何を見ていたのか。
お前にとって和也は。
和也にとってお前は。
“証”だったんだよな。
あの自分を見失ってしまいそうな巨大な揺籠の世界での“生きる証”──
《凍える指先》
「……っ!!」
頭に走った激痛に俺は飛び起きる。
呑気に気を失っている場合じゃない。
俺にはやらなければいけないことがあるんだ。
和也と正面から向き合うこと。
園村を助けること。
神取を倒すこと。
でも今は何よりも。
黒瑙を守ること。
それは子供の時に和也が死んでからずっと考えていたこと。
和也が死んでしまったことを知った時に黒瑙が俺に見せた顔が今でも忘れられない。
あの絶望したかのような表情がもう何年も経つのに瞼の裏から焼き付いて離れない。
「黒瑙!」
いてもたってもいられなくて、俺は思わず黒瑙の名前を、大切な幼馴染みの、愛しい人の名を呼んでいた。
「尚也、私は此処にいるよ?」
応じる声は意外な程に近くから聞こえた。
俺の、すぐ側で。
「黒瑙?」
「うん」
確かめるようにもう一度名を呼ぶと、黒瑙は困ったように笑った。
どうやら黒瑙は意識を失ってしまった俺を守るようにずっと側にいてくれたらしい。
ここまできて俺は漸く気付く。
氷に閉ざされたこの学校の中で、まだ自分の体がほんのりと温かいことに。