何色にも染まらぬ君へ
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気がつけば傍にいた優しい人
気がつけば遠い場所に行ってしまった憧れの人
その慈しむような優しさが
自分にだけ向けられていたのではないと分かっていた
それでも、惹かれずにはいられなかったんだ──
《何年振りかの再会》
作上明里は家族に見つからぬようにこっそりと家を後にする。
それはホストクラブ「ゴージャス」に通うためである。
父親がオーナーである店に娘が通っている、などとはばれるわけにいかなかったのである。
だがどこか抜けたところのある明里は、家族が既に自分のホストクラブ通いに気づいている、などとは知る由もなかった。
「父さん、母さん。姉ちゃん、また行ったみたいだぜ」
作上明里の弟である作上和希は少しうんざりしたように言った。
どうしてあの姉はもっとうまくやらないのか。
そう思わずにはいられなかった。
そのお陰で、和希にはしわ寄せが回ってきているのだ。
「全く、一度話をした方がいいのか?」
「でも、アルバイトも頑張っているみたいですからねえ」
「だがしかし、その金をホストに注ぎ込むというのは──」
また始まった。
和希は溜息を漏らす。
明里がホストクラブに出かけた夜は決まって「こう」なのだ。
毎回似たような展開の話に和希もいい加減呆れていた。
「とにかく、また今日もちゃんと店まで行けるか確認してくればいいんだろ?」
うんざりした口調で言うと、母親は「いつもごめんなさいね」と謝った。
何も謝ってほしいわけじゃない。
ただその過保護ぶりは何とかならないものか、と心の中で思うだけだ。
「じゃあ、いってきまーす」
「ああ、和希も気をつけてな」
父親の声に背中を押されて、和希は作上家を後にした。